2011/03/25

『フェイスブック 若き天才の野望』を読んで考えた未来の広告

フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)
フェイスブック 若き天才の野望
5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた

デビッド・カークパトリック 著

Facebookは昔から大好きだったけど、「ソーシャル」というバズワードは大嫌いでした。でも、きっとこれから僕はソーシャルを叫びだすと思う。いまさらながら。

映画『ソーシャル・ネットワーク』はかなりの部分がフィクションであるのに対し、この本はより事実に基づいていてザッカーバーグ自身へのインタビューも行っていることは周知の通り。さらに言えば、映画は草創期まででエンディングなのに対し、本書は2010年までを追い、未来についても言及されている。何より、人間模様を描いた映画と、企業やメディア運営を描いた本書という点で大きく異なっていて、このブログを見ている方にとっては身に覚えがある話が次々と現れてほっこりした気持ちになれるでしょう。Microsoftとの広告販売権のくだりなんか、最高にたまんないですね。あるあるネタで。

Facebookやザッカーバーグというと遠い世界を想像しがちだけれど、我々と同じようにいつもつまづきながら、最初は小さな山を越え、どんどんと大きな山へ向かって行った事がわかる。自分の過去の仕事を振り返ると、とんでもなく小さなことを必死こいてやっていたのに後から気付くみたいに。ただ、Facebookの場合、その山の大きさがドラゴンボールのストーリー並に指数関数的に大きくなっただけさ。。最初から今のFacebookのサービス構想やビジネスモデルがあったわけじゃなかったし、現在のFacebook Adsのターゲティングも、その価値に後から気付いたとされている。

結構な長編なので途中で挫折する人も多いと思うけれど、本当におもしろいのは終盤。しれっと告白すれば、ボクは今までFacebookコネクト(今はSocial Pluginsへ?)をサイト側が利用するメリットを理解できてませんでした。ストリームと連動するところがキモなのだね。今や無きFacebookビーコンしかり、行動がストリームに共有されると、友達からの反応があったりして楽しいから。

そして、今後はFacebookサイトそのものの重要性は薄れていく。免許証とかを使った本人確認ではなく、ソーシャルグラフで担保するという考えには涙が出る。透明性によって秩序を持たせる。ソーシャルグラフと認証が組み合わさることで、単なる本人確認からエスクローへと展開が可能になる。そこに金銭授受が発生するなら決済プラットフォームを統合すれば高い利便性が実現できる。そのアクションは、ワンクリックでストリームとして共有される。ストリームはFacebookサイトの外にあったって別に構わない。ユーザーと企業の利害は一致するから。アクションに関連した広告は情報としてインサートされる。完璧すぎる。

今のFacebook Adsはデモグラや興味のあるキーワードへのターゲティングだけですが、きっと今後は"シチュエーション"でターゲティングできるようになるだろう。それは地域情報だったりイベントだったり外部サイトでの行動だったりつぶやきだったり。きっと、現在多く存在する"広告メニュー"的なものではなく、代理店・広告主が自由自在に条件をカスタマイズできるリスティングのような形式で展開していくに違いない。いや、そうでなければ真価が発揮できない。すべてFacebook側で最適化なんて絶対に無理だから。これはFacebookサイトだけではなく、外部のサイトでもFacebookのデータを利用したターゲティングをできるようにするはずだ。

広告代理店はこれまでの検索ワード・コンテンツ・オーディンエンスデータに加えシチュエーションでのコミュニケーション戦略を実行でき、それらはデモグラによってフィルタリングできる。組み合わせパターンは爆発するから当然データマイニングと人間のマーケティング感覚が混ぜ合わされる。

僕らはFacebookによる閉鎖社会を過剰に警戒する必要は無い。Facebookは外部法人(人格)がユーザーに不適切なアプローチをしないように統制する、いわばフェイスブック市警察の役割をするはずだから。透明性を高めさせ、それでもフェイスブック市民によって通報されるような法人はフェイスブック市から永久追放される。だからFacebook八分を恐れて法人は悪さをできない。きっとザッカーバーグはそう考えるに違いない。

そんな風にザッカーバーグの思考回路をほんの少しだけ理解できるようにしてくれるのが、本書なのだと思う。



2011/01/03

[本]電通とリクルート / 山本直人

電通とリクルート (新潮新書)
電通とリクルート (新潮新書)

この本は、今まで自分の頭の中でモヤモヤとしていたことを、体系的にスパッと切り分けてもらったような気持ちよさがありました。

マス広告によって「意味の書き換え」を行う電通は「発散志向広告」であり、広告を集めたメディアによって消費行動へのガイドを行うリクルートは「収束志向広告」であるとして対立軸を持たせつつ、それを消費社会の変遷と照らし合わせて解く。意味の書き換えとは、新幹線を「恋人たちを結ぶ列車」にしたクリスマス・エクスプレスの広告に代表されるような、スペック勝負ではない世界のこと。リクルートが行ったのは物件スペックなどのバラバラな情報の企画の統一と検索性向上。電通は夢・ニュース・ストーリーを創り、リクルートはリアル・合理性を提供した。リクルートが提供していたのは、「使うもの」としてのメディア。戦後、大衆はやがて分衆・小衆になり、インターネットの登場もあり自分の行動を自分で決めるようになった。ちなみに、これを読んで今さらながらリクルートのかたがGoogleを競合視する理由に気付きました。

さて。ネット広告に話を移します。(本書の内容とはズレます。)

ネット広告の世界では広告主がブランディングかダイレクトレスポンスかのような二軸で議論されることが多いと思いますが、ここではちょっと違ってメディアの区分を。広告枠として強いメディアとオーディエンスデータとして強いメディアは比例しません。昨今オーディエンスターゲティングがブームになっていますが、本当に重要なのは、リクルートのようなガイドを行うメディアのオーディエンスデータ。この記事ではファンクションサイトと呼んでいましたが。そして、配信先はそれ以外のメディアで。「どういうデータが売れますか?」としばしば聞かれるのですが、「比較サイト・検索サイト・情報サイトなどのオーディエンスのインテントが浮かび上がる行動」と答えていますが、より正確に言えばガイドメディアかもしれません。今後ガイドメディアは、情報が整理されたコンテンツによるガイドだけではなく、オーディエンスデータによってサイトを離れた後にも生活者をガイドすることになるはずです。その世界では「オーディエンスデータの販売」は死語になっているはずです。

そして、この文章がすごくはまった。

 情報と人々の関係は、雨と陸地の関係に似ている。かつては、土が雨を吸収するように、人々は情報を得てそれをまた糧としていた。そして、大地が潤うように豊かになっていった。それは八〇年代に「消費社会」という森になった。
 今の風景は、まったく異なる。人々はコンクリートの地面のように情報をはじいている。常に豪雨が続いているような状況では、情報に押し流されてしまうからだ。ほとんどの情報が下水道に流される一方で、お望みの水路から自分の蛇口へとつないでくれるグーグルのような存在が重宝される。

これもネット広告に置き換えてみると。RTBの世界というのは、ひとりひとりのオーディエンスに対して蛇口が開通することを意味しています。(RTBに対する誤解が蔓延しているので、今後しっかり書きたい。)オーディエンスターゲティングはあくまでも土管であり、云わば"コミュニケーション・インフラ"。どこでもドアです。ボクはどこでもドアを開通させるお仕事をしています。それがテクノロジー企業です。ただし、どこでもドアが開発されても、しずかちゃんがシャワー中に入っていってしまっては元も子もないのです。

ということで、蛇口を通してどんな情報を提供するのかが問題です。私はバナーのクリエイティブは(課金形態にもよるが)CTRの高いものが良いと思っており、バナー内の情報がどうあれ構わないと思っています。問題は、クリックしたその先にあって、サービスサイトなのかキャンペーンページなのか、またはFacebookなどのファンページなのかはわからないけれど、広告会社はサイトに近い方向を担当し、テクノロジー企業はコミュニケーション・インフラを極めるという分業像を、個人的には描いています。広告会社はテクノロジーを作るのではなく使いこなすとも言えますが。キーワード〜やメディア〜よりもサイト上でどのオーディエンスにどんなメッセージを発信し続けるのか。そして、オーディエンスのサイト内外での行動データを解析し、リサーチだけでなく柔らかなCRMを。考えるだけで楽しい。

久しぶりにブログ書いたら、まったくまとまらない。

ちなみに、商学部の授業では本書のようなことをやっています。商学部、like


2010/11/02

ad:tech資料をアップロードしました

先日のad:tech tokyoでのMicroAdワークショップの資料をアップロードしました。
アドエクスチェンジエコシステムの全体像やオーディエンスターゲティングをざーっと理解するのにいい感じの資料になってると思います。
MicroAd ad:tech 2010 ワークショップ

PDF版はこちら


photo_11この中で「オープン」と盛んに言っておりますけれども、さらに言ってしまえば、アドネットワークというのはいわゆるひとつの合体ロボであるので、そのひとつひとつをバラバラに提供していくということです。

ここに出てくるMicroAdのSSPというのが、本日リリース出ましたこちらです。

マイクロアド、国内初のオーディエンス単位で配信広告を制御するSSP(サプライサイドプラットフォーム)、「MicroAd ADfunnel(マイクロアド アドファネル)」を提供開始。リアルタイムで配信広告を識別し、媒体社の広告収益最大化を支援

タイトル長げぇよ、っていう。

いやー、このブログも宣伝ばっかりになってきましたな。今月はちゃんと書きます。

photo_15ところで、SlideShareで日本語の資料UPするときって、pptでアップロードするより、一旦PDF化してからアップロードする方がフォントがきれいにいきました。


2010/10/04

[告知]ad:techとSPSSのイベントで話します

今月、2つほどイベントで講演します。

ad:tech tokyo 2010
2010年10月29日(金) 16:00〜16:40
@パークタワー東京
ビジターパス(無料 or ¥5,000)で見れます!●万円のカンファレンスパスじゃなくて、展示会の裏でやってる誰でも入れるワークショップですよ。
変わるアドテクノロジーの世界 〜進化を止めない米国と動き出した日本〜 (仮)
アドネットワーク大国であった米国は、今やアドエクスチェンジやオーディエンスターゲティングをはじめとする新しいアドテクノロジーの世界へと変貌を遂げています。日本でも胎動を始めた最新周辺動向をご紹介します。(未定)
ということで、アドエクスチェンジまわりのエコシステムなどの全体像を話そうと思います。アドネットワークとアドエクスチェンジの違いとか、アメリカと日本の違いとか。40分あるので、そこそこ深い話になると思います、RTBとか。「広告とはかくあるべき!」みたいな話はボクにはできないので、かなり具体的な話になると思います。カンファレンスとはまったく毛色が違うはず。準備進捗率0%。

SPSS | Directions Japan 2010
2010年10月22日(金) 16:50〜17:40
@東京ドームホテル
3億ユーザーのウェブ行動履歴がマーケティングの世界を変える〜ネット広告最新事例紹介〜
株式会社マイクロアドの保有する月間100億レコードに及ぶネット上のユーザー行動履歴を分析し、最適なネット広告を配信する最新事例をご紹介します。広告配信実績データに基づく決定木などを用いた最適化手法、ユーザーの過去の行動データから興味関心を類推するターゲティング手法、大量データの分析環境、IBM SPSS Collaboration and Deployment Servicesを用いたプログラミング不要の自動化、テキストマイニングによる文脈に連動した広告配信手法などを各ソフトウェアの操作画面を用いながら具体的にご説明します。また、マーケティング領域のデータマイニングという”文系・理系の谷”をいかにして越えるか、精度とビジネスのバランスといった現場の話も紹介します。
インターネット以前のマーケティングの世界では考えられなかった、大量の生活者の自然な行動データを利用した新しいマーケティングの世界の一端をご覧ください。
こちらは「ネット広告業界にいて、データ、データっていうけどどうしたらいいか全然わかんない」「ダイレクトマーケティングの担当者の方」「Rでデータマイニングをやったことあるけど、ビジネスにどう活用すんのかコツがわかんない」という感じの方を想定した話をする予定です。データベースにデータさえあれば、SPSSのソフトを使ってビジュアルにマウスでゴリゴリおもしろいことができますというのをお見せする感じです。はい、準備できてないのでまだわからないですが。

この日は早稲田大学の守口先生も講演されるのでオススメです。

2010/09/12

全アドネットワーク業界人が泣いた!『アドネットワーク・リポート』

51NX2194HJL遂にシード・プランニング監督による最新作が登場!4枚切り食パンよりも分厚いこの超大作のタイトルは『アドネットワークの動向分析調査』。

今回はネット広告の中でもテーマを大胆にアドネットワークに絞り込んだ。そのあまりのニッチさに一時は公開が危ぶまれたが、どうやら公開にこぎつけたようだ。

世の中のネット広告関連本ではアドネットワークはもちろん紹介されているけれど、アドネットワーク事業者のビジネスモデルをここまで大胆にさらけ出した作品は過去に例を見ないだろう。そう、書店に並ぶネット広告本は広告主向けのアドネットワーク活用方法だからだ。アドネットワーク事業者それ自身の利益構造や枠の仕入れ方法について解説したシード・プランニング監督の暴挙をここに讃えよう。もし、これからアドネットワークビジネスに参入しようとしているオーディエンスがいれば、上司とのミーティングを重ねる前に、まず本作を何度でも食い入るように観るべきだ。そして、その頭の中の戦略を練り直すことになるだろうね。

キミたちが大好きな、あの話ももちろん登場するよ。そう、アドエクスチェンジをはじめとするアメリカ最新情報だ。もちろんこのブログよりも豊富な情報が満載だ。(このブログの著者は最近情報を出し惜しみしているってもっぱらの噂だぜ。)西海岸の太陽からニューヨークの摩天楼まで、余すところなく収録されている。

圧巻なのは14社ものアドネットワーク事業者へのインタビューで飾られた100ページに渡る壮絶なラストシーンだ。とてもじゃないがCNETには掲載できない内容ばかりだよ。非公開情報のオンパレードさ。この暑い夏がみんなを開放的にさせちまったのかな。まるで自分が芸能レポーターにでもなっちまった気分だぜ。もちろん石田純一よりも面白いコンテンツであることは保証済みさ。(ちなみにしゃべったのは俺じゃないぜ。)

最後にちょっとだけ真面目な話をしようか。俺がネット広告についていつも偉そうなことを知ったかぶりで語っているのは、実はシード・プランニング監督の過去の作品のおかげなんだ。これが世の中で最も効率的に情報を収集できる手段ってわけさ。社内外・競合含めたたくさんの人々と話したり、ネット上の情報をくまなく調べたりするよりも効率的にね。これがあれば安心して京都のお寺で座禅しながらビジネスができるってことさ。

そして、社員に広告主側向けのネット広告本を読んで勉強させたり研修メニューを独自に実施するのと、アドネットワークビジネスの内側に大胆に切り込んだ本を読んで勉強させるの、どちらが良いだろうか?このテーマのレポートをネット広告業界に通じていないコンサルティング会社に調査させたらいくらかかるだろうか?(そしてその成果物を見て笑っちゃうのはご法度だぜ。)そう、答えはもう決まってるよね。

さぁ、189,000円を高いと思うか安いと思うかは、キミ次第だ。

レポート名      アドネットワークの動向分析調査
発刊日     2010年8月25日
体裁     A4 / 318ページ
販売価格     189,000円(本体価格180,000円、消費税9,000円)
発行     株式会社シード・プランニング