2010年01月

2010/01/31

Yield Optimization(SSP)とは

《連載》ネット広告エコシステム
第一回:Ad Exchange(アドエクスチェンジ)とは
第二回:DSP(Demand-Side Platform)とは
第三回:Yield Optimizationとは
第四回:RTB(Real-Time Bidding)とは
第五回:Data Exchanger(データエクスチェンジャー)とは

本日はネット広告エコシステム連載の第三回。Yield Optimization(イールドオプティマイゼーション)と呼ばれるサービスについて。

Ad Exchangeは市場、DSPは広告主の効果を最大化するもの、そしてYield Optimizationは媒体(メディア)側の収益を最大化させるものです。市場は需要と供給によって成り立つわけですが、需要側が広告主側、供給側が媒体側にあたります。そのためDemand-side Platform (DSP)の逆の存在として、Supply-side Platform (SSP)とも呼ばれます。なお、"Yield"とは収益や収穫高といった意味合いの言葉です。Yield Optimizer、Yield ManagementやPublisher Optimizationといった呼び方をされることもあります。

Yield Optimizerが何をやっているかといえば、元々は複数のアドネットワークを収益を最大化させるように回すということでした。フリークエンシーはCTRにとって非常に大きな要素であるため、複数アドネットワークのフリークエンシーを最適化したり、米国では地域がマーケティングにとって非常に重要ですし、英語圏であれば国外アクセスも多くあるためエリアでアドネットワークを制御したり。しかし、最近では、Audience Data、つまりはcookieを利用した行動ターゲティング等によって付加価値をつけた上での販売にシフトしています。その他にも、媒体が自らのオーディエンスを分析することができる機能や、行動履歴の販売といった様々な分野にも展開しています。

これらが意味するところは、『サイトが外側とつながる』ということに尽きます。まずは媒体側の視点から見てみます。たとえば、サイトカタリストやGoogle Analyticsでの分析結果を広告ビジネスに活かすことができるでしょうか?広告配信結果をExcelや独自システムで分析することで広告ビジネスに活かすことができるでしょうか?限りなくNoに近いYesだと思います。そこである程度の知見を得ることができても、デプロイできないためです。「なるほど。で、どうすんの?」です。

自サイトだけの情報では、オーディエンスがどんな人かの情報は極めて限定的です。自サイトのスポーツカテゴリを閲覧した人はスポーツ好き?それよりも、外部サイトでスポーツ用品を買おうとしている人の方が強いインテントを持っています。これらの情報を突き合わせることが付加価値を生みます。しかも、自サイトのスポーツカテゴリを閲覧するオーディエンスは何人いるでしょう?一ヶ月3万円分しか消化しない広告メニューは作れません。これを複数のサイトでまとめることで、販売が可能となります。

視点をYield Optimizer側に変えてみます。Yield Optimizerはcookie帳を持っていますので、impressionのリクエストが来た段階で、どのアドネットワークやAd Exchangeが最も収益を上げるかを予測することができます。Yield Optimizer大手のPubMaticがよく言っていることですが、現在一般的な手法である平均eCPM(RPM)の高い順にアドネットワークを数珠繋ぎにしてもダメです。早稲田の落ちこぼれよりも明治の優秀な学生の方が企業にとって必要な人材であるのと同様です。(きっちり説明したいけど長くなるので省略。)

さらに視点を需要側に変えます。代理店や広告主からYield Optimizerを見るとAd Exchangeと同様に見えます。ただし、Ad Exchangeを通じても売買されます。(これも省略)

Yield OptimizerはDSP以上にイメージしづらいかもしれません。ただ、この世界を知れば知るほど、これは機能するなぁと思うようになるはずです。そして、2010年の日本にYield Optimizerを輸入しても、まったく機能しないというのも確からしい事実。まったく違うエコシステムに"優れた"遺伝子を持つ生物を放流しても死んでしまいます。ふぇっふぇっふぇ。



2010/01/26

ダブルクリック社、消滅。

米国グーグル社らに対するDART事業の譲渡及び仲裁手続の終了並びに当社の商号変更について
トランス・コスモス株式会社とダブルクリック株式会社の株式交換契約及び合併契約の締結について
ようやくねじれ解消ですね。そもそもはDoubleClickとトラコスの子供を、DoubleClickがGoogleと再婚する時に親権を取れなかったところに端を発して訴訟沙汰へ。世界的には本格的Ad ExchangeとしてバージョンアップしたDoubleClick「あたし、生まれ変わったのよ。」だけど日本に残してきた孤児は学校に行けず、赤い涙を流したところで手切れ金。涙の再会へ。

これで日本市場でもGoogleが直接DoubleClickを展開できるわけなので、影響が無いわけがありません。巨大Ad Exchangeが、一夜にしてそびえ立つことになるかもしれないのですから。


2010/01/24

ブラックバスによる生態系への影響から考える

ブラックバスによるエコシステム(生態系)への影響というと、あたかもすべての環境でブラックバス以外の生物が壊滅させられるようなイメージかもしれない。ただし、実際には壊滅させられる種とそうでないものがいるし、湖沼の環境によって影響の大小が異なる。たとえば遊泳力の強い魚種、生息域の異なる魚種、小動物が隠れる環境のある場所といった場合には駆逐されなかったりする。一方、遊泳力の弱い水生生物だったり、コンクリート化された環境である場合には著しく生物のダイバーシティ(多様性)が低下する。そして、ある一定のバランスまで行き着くと均衡する。

ここで話しているのは、資源としての他生物への影響ではなく、生物のダイバーシティとしての話。アユやワカサギのような金になる資源の減少の話とは異なります。いわゆる『生態系の破壊』は漁業資源の減少を指す議論が多い。経済合理性や人間の生活にとっての合理性。CO2も石油も人間にとっての合理性だから。もはやブラックバスが観光資源化している地域も多数ありますし、そうした地域で急激にブラックバスが減少すれば関係者にとって"破壊"となるでしょう。そうではなく、漁獲されないような生物もブラックバス(やブルーギル)を最大の影響を与える変数として、多数姿を消したと思われるという話です。

「生物にダイバーシティがあるのって、何のメリットがあるの?」と質問されても、答えられない。「そうあるべきだから。」としか答えられない。「なぜ人を殺してはいけないの?」の議論と一緒で。

なんでこんな話題を持ってきたかと言えば、Twitterによって、私の情報源であったIT系のソーシャルブックマークやブログ(RSS)から有益な情報が激減してしまったことからブラックバスを思い出したのです。Buzzurlの読者機能や好きな執筆者だけをピックアップしたRSSリーダーはとてもすばらしい情報収集環境だったのだけれど、この変化は本当にあっという間だった。つまり、Twitterという外来種が放流されたことで、IT系パーソナライズドメディアのエコシステムが急速に変化した。

生物のダイバーシティに経済的合理性があることはほとんど無い。あらためて言うと、漁業関係者にとって影響ある種が一部存在する。メディアのダイバーシティによるユーザーベネフィットも経済的合理性に結びつきづらい。結びつかなくはないけれど。これも、企業が儲かるか儲からないかの話ではなく、ユーザーにとっての話。

情報の可搬性がますます高まる中で、メディアのダイバーシティの低下速度は加速しているような気がする。いわゆる『Web2.0化』によって一旦ロングテール化した情報は、各種APIによって再び集約・集権されてきているような、なんとなくのイメージがある。Twitterはノイズに埋もれ、情報収集に多大な時間をロスしてしまう。やりきれぬ。。

ところで、Twitterで十分だからRSSリーダーを使うのをやめたという話をものすごいたくさんの人から聞いたのだけれど、ちょっとビジネスマンとしては危険だと思っていて。企業のプレスリリースやニュースサイトに本当の種が埋まっていることが多いとこれまでの経験からも思っているから。(ちなみに私のGoogleリーダーは日本語英語含めて125本登録されていて、1日放置すると数百件溜まる。これのタイトルは全部目を通してる。iPhone以降は楽になったね。)TwitterでRTされまくる記事やはてブの人気記事は確かに"おもしろい"ものは多いけれど、たぶんビジネスに直結する情報じゃない。本屋を埋め尽くす自己啓発本のように。本当の差異はRTされまくる情報からは産まれないから。時代の流れを的確に読むことと、敵を出し抜くことは、違う。

まぁこの記事は誰に対する怒りでもなく、オピニオンでもなく、ストリームについていけない単なるノスタルジジイのぼやきです。

(追記)
本題のひとつを忘れてた。みんな、ブログをがんばって書きましょうよ!! 

2010/01/17

Googleリアルタイム検索にフォロワー数が影響を与えていいのだろうか

GoogleのTwitterリアルタイム検索の順位はフォロワー数で決まる 〜 リンク数で決まるPageRankに酷似
Googleのリアルタイム検索、つまりは検索結果にTweetを表示するものですが、このランキングアルゴリズムにフォロワー数が影響を与えるとのこと。

3188408507_2713023e1a_oWebでのリンクの対象はコンテンツ。それに対してTwitterのフォローは人が対象。リアルタイム検索で知りたいのは最新の情報(コンテンツ)と世の中の反応。Recency(鮮度)とDivercity(多様性)が重要でしょう。なのにフォロワー数を入れてほんとにいいのか?と。(特に今の日本のTwitter authorityだったら政治思想の分布も日本のそれとはかなり違うはずだし。)言い換えると、Webリンクの"authority"とTwitterの"authority"って違うと思うのだよなぁ。

モバイル検索の精度が一向に上がらないのはリンクというエコシステムが無いからで。PCの世界にはリンクというエコシステムがあり、それがテーマに対する重要度をあまりにも美しく表す奇跡的とも言うべきセンサーだった。それが無ければ、いくらGoogleであろうが精度は上げられない。セルゲイ・ブリンとラリー・ペイジは魔法使いだったのではなくて、金鉱脈を発見した人々。リンクというセンサーを。データマイニングというのは、新しいセンサー探しの旅といってもいいかもしれない。精度改善というと、なにかコツコツやるイメージが強いと思うけれど、それはある程度行きついた後で、しかもスパムとかノイズとかを除外するところまで行ってからの話。その前に、切れ味鋭いセンサーを探さなければならない。風邪が発症する前に喉がいがらっぽくなるみたいなね。

その話で言うと、LPOとかレコメンドとかクリエイティブオプティマイズとかは、アルゴリズムを洗練させてもたぶんしょうがなくて。いずれもそこそこのセンサーは見つかるけど、強烈なセンサーはそもそも存在していないから見つけようも無いというのがほとんどでしょう。逆に、kizasiさんがやっているblogramとかのデータはもっともっと精度改善して広告界と結びつくことで大化けする可能性を秘めていると密やかに思っている。

リアルタイム検索は、個人のソーシャルグラフをより強く、パーソナライズ方向に強くしたほうが良いと思う。一般のパーソナライズド検索はあまり必要性を感じないのだけど、リアルタイム検索においては。パーソナライズはDivercityとは相反するけど、クエリによるんじゃないかと。まぁむしろTwitterで日常的なつぶやきを排除して、するどいつぶやきだけを抽出するTwitterクライアントを早いとこ作ることにそのリソースを使っていただきたいたまーに出現する良つぶやきのために時間を消費せねばらならんというのはつらすぎる。。

ま、毎度書いてる通り、リアルタイム検索なんてやっても、ぜんぜん儲かんないと思うけどね


2010/01/11

行動ターゲティングとプライバシー

TV画面でPCを使うためにケーブルやらアダプタやらbluetoothキーボード&マウスとか買ってたらいつの間にやら2万円超えていた、俺です。これ、オタクと呼ばれるレベルだよな。本来は会社のPCにリモート接続できるPCを常備しておきたいって目的だったのについつい。。ということで、現在40V液晶を見上げながら書いています。正直疲れます。 

行動ターゲティングのプライバシーについて。日本の生活者が行動ターゲティングによる配信を受けたくない場合、ほとんどの場合、ユーザーが各々のターゲティング事業者のページの中にあるオプトアウトページに行って配信拒否する形式です。日本では行動ターゲティング事業者は数社なのでなんとか手動で拒否していくことができますが、米国の場合は何十社と存在するので一括でオプトアウトすることのできるページが存在しています。

Opt Out of Behavioral Advertising - NAI

これはNAI(Network Advertising Initiative)という業界団体が作っているものです。これに相当する機能は現在日本にはありません。

上記の話はユーザーにとっての利便性の話でした。一方、サイトオーナー側がユーザーに利用している行動ターゲティングを告知しなければならないといった議論があります。ただし、生活者がプライバシーポリシーをサイトごとに確認するのは現実的ではありませんし、サイトオーナー自身が書き出すcookieをすべて把握することも現実的ではありません。(普段使っていないブラウザの)cookieを全削除していくつかの米国のサイトをご覧いただければ驚かれると思います、書き込まれるcookieに対して。

もうひとつ、"Transparency"と米国事業者が呼ぶ概念があります。これは様々な用途で使われますが、生活者に対して使われる際には概ねプライバシーに関する透明性についてです。こうした事業者の当該ページを訪問すると、生活者自身がどのような情報を認識されているかが確認でき、さらに興味関心領域を追加・削除できることも多くなってきています。

上記の話をまとめると、
  1. 国内行動ターゲティング事業者一括管理プラットフォームが必要
  2. 告知義務を媒体ではなく、上記プラットフォームへ
  3. 生活者が確認・管理できる機能を

ということになります。米国ではこうなりつつあるわけですが、これは理想的だと思います。社会問題化するリスクよりは、オプトアウトされる売上減のほうが遥かに小さいでしょうから。

本当に生活者のことを考えるのであれば、現実的に確認するのは難しいけれども"告知をしました"という事実にこだわるよりは、上記のような姿へ日本も業界をあげて近づける必要があると思います。