2008/11/02

[本]次世代マーケティングプラットフォーム/湯川鶴章

次世代マーケティングプラットフォーム 広告とマスメディアの地位を奪うもの
次世代マーケティングプラットフォーム 広告とマスメディアの地位を奪うもの


著名ブロガーでもある時事通信の湯川鶴章氏の新書。
非常に乱暴なまとめ方をすると、CRMは単一ベンダー・単一チャネルに閉じたものではなく、マルチベンダー・マルチチャネルになって行くよ、既存の”広告”だけの視点しか持ってないと危険だよ、という感じ。

総論は賛成なのだけれど、アドネットワークや行動ターゲティングを作る者の現場感として、各論は「どうかねぇ」といった感じ。

Web、特にcookieを利用したターゲティング技術の発展は目覚しいものがあって、有効性に関しても間違いないという確信はある。アドネットワークやAd Exchangeにしても然り。さらに進化するのも間違いない。だけど、それがAPIによるベンダー連携やマルチチャネルで、となるとどうなのか。具体的には、プライバシーを保護した上でcookieの壁を越える何らかのイノベーションが必要だし、各事業者のビジネスが成立しないといけない。

この本の中で大きくフォーカスされているOmniture1社とってみても、普通のサイトではとても導入できるような金額じゃない。もちろん中小サイトは導入できないし、大手の中でもすでにWeb事業で大きく黒字化できているような「既存の勝ち組サイト」でなければ入れられない。Salesforce.comなども組み合わせたら、さらに。結局はこれまでのSIerによるCRMシステム構築のような金額にまで行きかねないのでは、と。もちろん各ベンダーのユーザーインターフェースは非常に優れてるから、SIerが作るものより使いやすいだろうけど。

さらに問題なのは、クライアントのノウハウ&スキル。今の現場感からすると、まだまだだろうなーって感じ。クライアントはもちろんのこと、インタラクティブ系代理店だってまだまだなんだから。リスティング広告が脚光を浴びてから数年、リスティング広告はもはや工場の職人技みたいになってますけど、これがさらに拡がるのだから大変。キーワードっていう職人技よりも、マーケティングの思考が必要だし。

ベンダー側からすると、Googleの無料ツールなどへ対抗して各社に値下げ圧力がかかると、きっと撤退せざるを得ない。仮に安く提供して導入企業が増えても、コストに見合わないでしょ、ノーコンサルにしないと。で、結局Google一社でまとめた方が良くね?って。

あと、特にデジタルサイネージの章で、広告効果測定がメディア収益が伸びることへの必要条件であるともとれる内容に?効果測定って、十分条件なんでは?既存のマスメディア広告は過大に予算が投入されているので、ここは値下げされるべきでしょうねー。これは測定できないがゆえの功罪。測定できる=本当の価値が算出できる→ネット広告は効果がある&効果があるものを選別できる→ネット広告市場拡大。で、デジタルサイネージってどうよ?そんなに価値あるんだっけか?

じゃーお前はどう思うんだって言われると、PCのWebはPCの世界に閉じたターゲティングやイールドマネジメントツールの進化によってしばらく発展を続けると思います、さらにはFacebookやiPhoneのようなプラットフォームによって、広告を超えた新しいマーケティングは次々と生まれてゆくんだろうって、思います。それ以上はわかりまへん。(いつもこのオチ)

ところで本の中で頻出する「サザエさんの三河屋さん」って、俺知らないんだけど。。