この三連休は天気もぐずついてたので、かなり本を読んでました。

ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質
著者:ナシーム・ニコラス・タレブ
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2009-06-19
おすすめ度:4.5
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ブラック・スワンとは、これまで人々は白鳥は白いと思っていたが、オーストラリア大陸が発見され、黒い白鳥がたった1羽発見されただけで常識が覆されてしまったという実話からきた言葉。「白い白鳥がいる。黒い白鳥がいるという証拠は見つからない。」をいくら積み上げてもしょうがないってこと。そして人間の脳味噌ってのはどうしても間違った判断をしてしまうってこと。

著者の云うブラック・スワンの特徴は下記の三つ。
(1)異常であること(過去の経験からは考えられないこと)
(2)とても大きな衝撃があること
(3)起こった後で適当な説明をでっちあげたり、予測可能だったことにしてしまうこと

過去のデータから未来の確率を予測する。これが統計学やデータマイニング的なアプローチ。これらは確率が低いものを外れ値として真っ先に除去したり、棄却したりする。逆に、確率が低いが、起こったらとんでもないことっていうのがブラックスワン。東京大地震みたいな。

さて。これをアドネットワークビジネスにあてはめてみるに。
たとえば、アドネットワーク事業にとってのブラックスワンとは、Tracking cookieの利用が突如法的に規制されたり、突如IEのプライベートモードがデフォルトでになったり、住基ネットのようなマスコミバカ騒ぎやそれにあいのりする力だったりという、極めて可能性は低いが、万が一起きたらとんでもないリスクを抱えているわけですね(と、俺が予想している時点でこんなレベルじゃないことが本当のブラック・スワン!)。だからといって可能性の低い未来の事象に照準を合わせるってことも経営判断として正しいとは言い難いので、ある程度の備えをするしかないんですけどね。

また、俺はコンバージョンもブラックスワンだと思ってます。コンバージョンデータはほとんどモデルに加味しないというと、「はぁ?」という反応を示されるわけですが、なぜならばコンバージョン数というのは極めて限られている。しかも大半の広告主はひとつのアドネットワークでは月間で100レコード未満のコンバージョン数しかない。CTR0.1%, CVR1%で仮定すると、インプレッションからコンバージョンまでの確率は0.001%になるわけで、100,000インプレッションレコードの中に1コンバージョンレコードが紛れ込んでいるわけです。これをまぐれと呼ばずなんと呼びましょうや。たった数十レコードのまぐれを基に、未来を予測することはできませぬ(通常オーバーサンプリングという手法で解決するのだが、麻.薬でもある)。だから他のセンサーを使います。

リスティング運用をコンバージョンデータで最適化するのはもちろん良いことです。なぜならば、検索結果という、極めて安定した環境(面)であるから、将来にわたっても環境はあまり変わらない。しかも、最重要変数は絶対的にキーワードと順位であるし、地域や時間帯といった弱い変数が加わるだけ。コンバージョンはきれいに確率に従う(まだブラックスワンに至っていない状態とも言えるが)。ただし、アドネットワークは違う。極めて不安定な環境であるから、将来は環境がすぐに大胆に変わる。かつ重要な変数も固定的ではない。不安定な環境で蓄積されたデータというのは、未来予測に使うのにあまり適していない。

たとえば、サイコロは形が変形しない、つまり安定しているから、確率は過去も未来も変わらず各16.7%と予測可能。次の目は予測できなくとも、確率は極めて正確に。しかし、天気は気圧や地形や風や気温など各要因(変数)によって大きく左右されているから、未来予測に関してはそこまでの精度は出せない。
※ちなみに、この2つ目の例は本書とはほとんど関係のない、予測に使う材料という議題から独自に派生させた内容。

わたくしは、まさに本書にて糾弾されている側であり、いろいろと身につまされるところが多く。ただ、こんな議論を普段から会社でしてたらまぁ仕事はできない奴だろうし、"めんどくせぇ奴"としてつまはじきにされることは間違いないので、「俺ってデータに取り憑かれてるよなぁ」「なんでこうも騙されるんかなぁ」感のある人だけ読んだ方がいいかも(しかも哲学に関する記述が冗長だ)。一般的なビジネスシーンにおいて、確率に従うという判断は通常は正しいのだから。通常は。


1Q84 BOOK 11Q84 BOOK 1
著者:村上 春樹
販売元:新潮社
発売日:2009-05-29
おすすめ度:4.0
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いわずもがな。『1Q84』が"Big Brother"の『1984』を題材にしていると知った時点で本屋に駆け出していました(いまさら)。Big Brotherが、そうなるわけかー、と。初村上春樹でしたが、おもしろいです。連休中に読破しました。

この2冊を交互に読んでたんだけど、妙に共通するようなしないような、よくわかんなくて気持ち悪かった。

さて。
この三連休で、今まで何度も失敗してきた宣言を、今度こそ守り抜く覚悟をしました。継続力には自信があるが、どうしても守れないのがこの2つ。「サラリーマン宣言」と「ケータイメール即レス宣言」。サラリーマンという言葉はかっこいい言葉なんだ、とドラマ『官僚たちの夏』のかっこいい堺雅人を見て思ったのでした。俺も良い歳だし、いつまでも小栗旬ではいられません。