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《連載》ネット広告エコシステム
第一回:Ad Exchange(アドエクスチェンジ)とは
第二回:DSP(Demand-Side Platform)とは
第三回:Yield Optimizationとは
第四回:RTB(Real-Time Bidding)とは
第五回:Data Exchanger(データエクスチェンジャー)とは

ここ数ヶ月で、また米国のネット広告に日本がぐいぐい引き離されはじめた気がするので、ちょっくらがんばって書いていきます。(実はこのブログ、買収とかのニュースをネタにした記事がほとんどなので、ゼロベースであまり記事を書いたことが無い。。)

諸説はあれど、やはり日本は米国の2年遅れ。米国でアドネットワーク(Ad Networks)が完全に普及したのは2007年頃。その2年後の2009年、日本でも純広告は一部を除き売れなくなり、アドネットワークが普及しました。金額ベースではまだまだですが、枠ベースでは相当な占有率に達しているはずです。同じ2009年、米国ではAd Exchange(アドエクスチェンジ)がかなりの勢いで台頭しました。

Ad Exchangeとは、日本では『アドマーケットプレイス』(Ad Market Place)と呼ばれることの多い、広告の取引市場です。(以降、日本のものは『アドマーケットプレイス』、米国のものは『Ad Exchange』と呼ぶ。)日本での『アドマーケットプレイス』のイメージは、「広告主が広告枠をネット上でダイレクトに購入することができるから、代理店を中抜きにできる」というようなイメージだろうと思います。

ところが、米国で普及したAd Exchangeは全く様相が異なります。一点目の違いが、買い手がアドネットワークや広告代理店であって、広告主ダイレクトではない点。株式市場で言うところの個人投資家が数株をポロポロ買うような世界がいわゆる『アドマーケットプレイス』だとすると、『Ad Exchange』は機関投資家やファンドが買い漁るような世界。二点目の違いが、枠を指定して買うのではなく、オーディエンスデータ(Audience Data / ユーザーデータ / cookie)を利用して買うという点。むしろ、本当の枠などは見えなくて問題になっている(Transparency / Liquid)。三点目の違いが、ターゲティング企業(Data Exchange)や広告主最適化(DSP / Demand Side Platform)、媒体収益最大化(Yield Optimization)や媒体選定(Brand Safe)といった第三者のプレーヤーが多数エコシステム内に存在している点。(下図)

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日本の『アドマーケットプレイス』の場合、レップ系であればブランド名のある媒体のみにカスタマイズして配信するパターンと、CGM系の媒体をダイレクトに買い付ける2パターンが存在しています。いずれの形態も、媒体側から見ると「広告主とネットで直接取引できる」、広告主側から見ると「媒体を選べて一括で出稿できる」といったポジティブな意味合いを持つものです。ところが、米国で普及したものはこれとは全く異なり、媒体側から見ると「売れ残り枠を放りこんでおくと、勝手にいくばくか収益が上がるもの」であり、広告主側から見ると「アプローチしたいユーザーにだけリーチできる」(cherry pic)ものです。

米国でも、以前はAd Exchangeはゴミ溜めであって、ダメダメであったわけです(推測)。そこが変わったのが、オーディエンスのデータによる買付、言い換えると独自データや第三者データを使ったリターゲティングを含む行動ターゲティング等をAd Exchange上で利用できるようになったためです。その爆発は、まるでFacebookがAPIを公開して一気にエコシステムがポジティブスパイラルに入ったように。「媒体を買い付ける世界」から「オーディエンスデータで買い付ける世界」へのパラダイムシフト。さらに世界は1 impressionごとにcookieなどに対して入札されるRTB(Real Time Bidding)へと踏み出している。

以上、あらすじ。各々詳説へ続く。