9月末が締めの当社にとって、年末はステークホルダーのみなさまやメンバーに対して振り返りと展望についてコミュニケーションする機会がなにかと多く、若干振り返り疲れがあるものの、未来の自分への手紙として、歴史として、記しておくことにしよう。

リアル店舗を運営されるお客様に対してIDFAなどの識別子をもとに広告配信事業を行う私たちにとって、2020年という年は二発の巨大隕石が衝突したような年でした。

一発目の隕石は、もちろん新型コロナウィルスの感染拡大です。ネット広告業界の多くは、ゲームやECなどの新型コロナの影響を受けない、むしろ恩恵を受ける会社も多くあったことと思います。しかし、私たちの事業は、何らかの店舗・教室・物件などのリアル世界で事業を営んでいらっしゃる方々がリアルの集客を支援するための広告であったため、広告の取り止めが相次ぎました。

二発目の隕石は、Apple社によるIDFAオプトイン化です。私たちはApple社の意思決定の遥か以前から、独自にTCFに準拠したCMPを開発し、明確なオプトインデータのみに切り替える意思決定を行い、いざ行かんとしたタイミングで、これである。悪貨は良貨を駆逐する。ルールを守らないプレーヤーを排除するためにはゲームそのものを終わらせるしかないと神は判断された。努力が無に帰すという言葉が、これ程にあてはまる出来事を私は知らない。

アドテクというカンブリア紀が、巨人らによって2021年には終末を迎えることになる。後から振り返れば、突然変異のようなエッジの効いた3rd partyのベンダーが次々と現れて巨人と連携し、在るものは自らがマネーゲームの対象となっていた世界は、一種異様な世紀だったのかもしれない。

ただ、2020年にも良いことがありました。世界に強制アップデートがかかることに翻弄される人生、嫌いじゃない。むしろ、燃えるタイプといっていい。もし自分が関ケ原の時代に小さな小さな大名だったとしたら、戦局を見極めて戦功をあげる自信はある。

非アドテク事業として2020年7月から着手したミニアプリSaaS事業は、みるみる形になってきた。はじまりこそ私の「えいや!」で始めたものの、ネット業界未経験で入ったメンバーたちが、広告事業での成長経験をもとに「あー、次これっすよね。はいはい、やっときます。」といった感じで、具体的に指示しなくても動いてくれるようになっていて、心底嬉しく思った(不器用なので言葉に出せないのだけれど)。ミニアプリは読み通り、ビッグウェーブが来てる。DSPが来る前もこんな雰囲気だったよ。

2020年を漢字で表すなら「転」。起承転結の「転」。創業当初からの事業を計画通りに成長させてはきたけれど、そのままゴールしても面白くないよね。おもしろいドラマには必ず「転」がある。「転」は自分では起こしづらい。なぜなら、「転」は痛みを伴うから。外部からぶん殴られないと、人間なかなか動けない。2020年にぶん殴ってくれたコロナ君とリンゴ君、感謝するよ。少々視野が狭くなってしまっていたけれど、私たちが解決すべきお店のソリューションは集客以外にもまだまだある。それをDXと呼ぶのかノーコードと呼ぶのかは関係ない。お店をスマートにするお手伝いをしていこうじゃないか、2021年。

預言の書

私は、預言の書を持っています。前回のポスト「Bubble」(バブル)で、奇しくもその数十日後のバブル崩壊を予言してしまったから?いやいや。

IMG_1216これは、私がサイバーエージェントに入社した頃に配布された「maxims(マキシムズ)」という、名刺大よりも小さな冊子です。中にはサイバーの行動規範が書かれています(初版の条文はこちら)。今振り返ると、ある程度成長したベンチャーがどのように成長を続け、成長痛と戦っていくかが書かれているように思います。今のジオロジックが抗う課題はほとんどmaximsに書かれています。つまり、それらにきちんと対処できていれば、問題を未然に防げる、預言の書ともいうべきものなのです。

現在、maximsは二度改訂されてミッションステートメントとして残っているようです(現行版はこちら)。サイバーがメガベンチャーになるにしたがって、内容も成長精神・成長痛対策というよりは大企業病の蔓延を防いだりブレーキ機能の条文が増えたようです。今、数十名の組織であるジオロジックに断然しっくりくるのは、まだサイバーが胡散臭い会社だった頃に発布された初版のmaximsです。ただ、唯一と言っていいほど初版でフィットしないのが、採用に関わる項。初版では
「一流の人材がつくる、一流のチーム。」
とされていましたが、現行版では
「採用には全力をつくす。」
「能力の高さより一緒に働きたい人を集める。」
あたりに再編されていて、現行版の方がフィット感があります。

ジオロジックは創業から6期目に入り、いろいろ失敗もしてきました。ベンチャー界隈の古い格言は、だいたい合ってるなぁとトレースする日々です。特に、即戦力として期待する一流のベテラン採用において期待通りの成果を上げてもらえる人はなかなか出てきませんでした。そこで先日、優秀な若手の採用に全力をつくすと決めました(このポストも、野口がソーシャル活動にコミットすると合宿で宣言した結果なのである)。

足元、新型コロナウイルスの影響で私達の売上はズタボロです。GeoLogicのほとんどの広告主はリアル店舗を持っています。お店が閉まっているのだから、当然広告も止まります。多くの企業は採用を急減速させていると思いますが、私たちは積極採用を続けます。なぜならば、他のスタートアップとは悩みの種類が違うからです。私達は、次の資金調達ができない悩みではなく、外出自粛という短期の悩みだからです。だてに3期連続で最終黒字にしちゃうくらいの堅実な、スタートアップらしからぬ経営をしてません。

ただ、いざ採用に全力をつくそうと思っても、どうすればいいのかがとんとわからない。非モテ男子が「俺、モテることにした。」と宣言したようなものである。とりあえず、ロゴとサイトがダサすぎるので、今からかっこよくすることにした。ジーンズメイトからの「ちょっと渋谷行ってくる」的なアレです。ものづくりにかけては無限のエネルギーが湧き出す私ですが、これからはとにかく面接・面談の時間を多く取ります。

ちなみに、ジオロジックの行動規範はこれです。サイバーよりも、ちょっと技術エッジな空気感が出てるでしょ?
  • 知は力なり
  • 常に進化
  • スピードは質に勝る
  • そこにWhyはあるのかい?
採用にあたっては、過去の実績や前職よりも、事業への意欲、カルチャーフィット、そしてインターネットが好きなことを重視していきます。ビビッときた若者は、ぜひこちら https://www.geologic.co.jp/careers からご連絡ください。

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お久しぶりです。気づけば2019年は一本もポストしていませんでした。このタイミングでnoteに移行せずにライブドアブログのままなのが、私です。そういう、時代に流されない化石性分があります。だから、どれだけ世の中の関心がアドテクから離れても、やっぱりアドテクが好きなんです。(裏側にあるテクノロジーなんて一切見せない商品を作ってるけどね。)

2010年代前半のアドテクが過度の期待にあったことなんて、中の人間たちにはダンスの最中にもわかっていて、周囲のよくわかっていない人たちが油を注ぎ込んで燃やし尽くしてしまったというのがグローバルの状況だと思う。日本はそもそも、そこまで大きなバブルにならなかったと思うけど。

さて、ジオロジック社はと言いますと、いろいろな外部要因もあり注目される機会も増え、大きく成長しました。「位置情報広告といえばGeoLogic」と言っていただける機会も増えました。ただ、成長痛は節々にきていて、積み残した課題は山ほどあります。2019年の学びは「スタートアップはスケジュールとリソース計画は何が何でも合致させなければならない」ということでした。もう少し具体的に言うと、自分が過度にダウンサイドリスクを恐れたために開発リソースが不足してリリーススケジュールが遅れ、ビジネス拡大スピードにシステムが追いつけず、会社全体を疲弊させてしまったことです。

幸い、2019年の10月には新システムがリリースされて業務は激変し、徐々に血の巡りは良くなってきました。年末は本当に、ハリウッド映画のエンディングのような大団円で収まりました。これを書いている今も、過去最高の案件数が回っており、リリースがあと数週間遅れていたら年末年始はどうなっていただろうと考えると、判断に伴う責任というものを痛感せざるをえません。

本来スタートアップは、そういうことにならないように多額の資金を調達して、十分なリソースを確保するものだと思うわけですが、幾多のバブルを見続けてきた経験が、それを阻害するわけで。「あの会社はこういう状況でアクセル踏み間違えて消えていったよな」みたいな記憶が囁くのです。今、スタートアップ投資が加熱し、20代の起業家たちがぐいぐい攻めるのを横目に見ながら、化石じじぃはどう生き抜くべきか、思案する今日この頃です。

来たる2020年代のアドテクは、2010年代とはまるで違うものになると思っています。ただ、(それを「アドテク」と呼ぶのかは別として)RTBプロトコルの上で受発注される取引形態はしばらく続き、出力デバイスはPC・スマホを飛び出し、その上のレイヤーは信じられないくらいの進化を遂げると思っています。文書間のリンクのためのものだったHTML/Webがとんでもない世界を生み出してしまったのと同様に、アドネットワークの効率的な出し分けのためのものだったRTBがマーケティングの世界をも変えるんじゃないかと思っています。アドテク死すともRTBは死せず。RTBは楽しい。本当に楽しいよ。

結びを考えずに書き始めたわけですが、やはり常軌を逸したRTBオチを、2010年代の結びとさせていただきます。

スマホ広告主ランキングから一社も受注していない問題

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気づけば1年半ぶりのブログポストです。僕は渋谷で元気にやってます。

先日、ビデオリサーチインタラクティブさんから、非常に興味深いレポートが出ていました。

2018年の上半期に最も出稿のあったスマートフォン広告は「荒野行動」。次いで「Tik Tok」。
− スマートフォン広告統計サービス「SmartPhone Ads Report」より −

スマホ広告の広告主を、推定インプレッション数でランキングして、上位20社が公開されています。
勝手にアプリインストール広告と思われるものにラベルを付けてみました。

sp_ad_industries
ほとんどアプリインストール広告じゃないか!
この20社でスマホ広告の1/4のインプレッションを占めるとのこと。

なにより問題なのは、「GeoLogic Ad」ではこの20社からの発注を頂いてないこと!!
先日リリース(↓)させてもらった通り、500社以上の広告主様がいるにも関わらずですよ。0÷500=無。

位置情報広告「GeoLogic Ad」、広告主が500社を突破 





いや待てよ。これ、逆に言うと「のびしろですねぇ。」

最近の我々と言えば、これまでのネット広告販売とはかなり様相が異なってきております。教育・不動産・小売が半数を占めるネット広告媒体なんて聞いたことない。ぼくらが毎日目にするチラシ、電車の広告、街中の看板、DM…とかで目にする広告主が、いまスマホの位置情報広告にどんどん出稿をはじめている。ネット広告は「獲得系」か「ブランド系」かの二極ではなく、実は第三極があるんではないか。そんな新大陸の発見の気配を感じずにはいられない今日この頃です。

これまでいろんな広告プロダクトを作ってきたけれども、今までは効果を良くして競合からいかに予算を奪うか、みたいなところの話ばかりになってた。位置情報広告に関しては、競合がどうとかじゃなくて、目の前がもう未開の地すぎて、私のDNAに刻まれたゴールドラッシュの記憶・西部開拓精神がうずくのです。

確かに今のスマホ広告で大きくなるにはアプリインストール広告を徹底的に最適化するのが得策でしょう。ただ、僕たちはついに砂金の粒を見つけてしまったのかもしれない。本当に仲間が足りません。未開の地を一緒に開拓したい人、今すぐここから連絡ください。

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今年の正月に、抱負として「発信!」と宣言しながらも、ブログの管理画面を開くことのできぬままはや半年が過ぎ去ろうとしています。優秀な仲間を集めるにはブログを書くのが一番だとわかりつつも、筆が重いのです。そして人材系の会社の方からの各種督促メールも溜まっていくのです。人材募集については次のエントリーで書きます。宣言!

そんな中、ちょっとおもしろいネタがあったので、特にオチはないけどリハビリがてら筆を執ってみた次第。どんな文体で書いてたかも忘れてしもうた。

時は2017年、世は「人工知能(AI)」「機械学習(マシンラーニング)」が栄華の極みを迎えております。ほんの少し前までは「データサイエンティスト」「ビッグデータ」だったわけでございますが、きぃわぁどはいつの世も盛者必衰の理をあらわしもうす。まぁキーワードは勝手にやってくれという感じで、言葉の定義を議論するのとか、本当に森友加計ですね。重要なのは、環境の劇的な進化です。
  1. 計算場所がローカルCSV→DB→DWH→クラウドDBに変わって、劇的に早い・安い・旨い、の世界に。
  2. ちまちま個別に教科書を読ませて(理解させて)学習させる時代から、ディープラーニングに代表されるような、問題集と回答集だけをぜんぶ読ませて学習させる手法が、現実的に動かせるようになってきたこと。
  3. いろんなデータが取得され、クラウド上のストレージに事実上無限に蓄積できるようになってきたこと。(1.とかぶる)
  4. ...もうやめておこう
そんな中、興味深い記事が上がりました。まずご一読ください。個人的には分析をする「やり方」が最も重要だと思ってまして、そこを丁寧に解説されています。キーワードじゃなくて。
R, Python, SAS, SPSSをヨーロッパのデータサイエンティストの視点で比べてみた
http://qiita.com/KanNishida/items/3308de6cdea98d89edc7
私は最近はPythonを触ってる時間がたぶん一番長いんですが、実はデータ分析はほとんどSPSS Modelerでやってます。注意したいのは、この記事で言う「SPSS」とは「SPSS Statistics」(以後、Stats)のことであって、私が使っているのは「SPSS Modeler」(以後、Modeler)。Statsの方は分析始めた頃使ってたんだけどExcelのオバケのようなもので、Modelerはデータ分析のキャンバスのようなものなので、実はぜんぜん違う。
今回は特にプログラミング言語にフォーカスした比較ですので、SAS Enterprise Miner または SPSS ModelerのようなUIは今回の比較リストからは外してます。
と前置きがあるのだけれど、分析ツールにとってUIというものが非常に重要というのが昔からの持論。なので、この記事ではまるっと抜けているUser Interfaceとしてどう分析環境を構築するのが良いかというのが今回のエントリーの本題(ということにした)。近年のModeler (+Modeler Server)はもはやUIだけであって、アルゴリズムや計算はほとんどDB側で行うことが想定されてる、と思う。いわば、ガワ。

今、うちの会社で落ち着いている形式はこんな感じ。
  1. Pythonでデータを取得、軽く整形
  2. ストレージ(Amazon S3)に格納
  3. DWH(Amazon Redshift)に転送
  4. SPSS ModelerのUIで分析の流れを作る
  5. SPSS Modelerを実行すると、自動生成されたSQLがRedshiftに投げられ、最小限のデータだけがローカルに転送される
  6. モデリング or スコアリング
  7. 出力された値を本番システムに渡す
イマドキなのは6, 7の部分はクラウド側でやると思うけど。ModelerからもPythonやコマンドを叩けるので、できるといえばできる。あと、最近はAmazon Kinesis, Lambdaとか使って1-3をストリーミングへ移行中。本題とずれてきたので簡潔に言えば、分析はR, Python, SAS, SPSS (Stats)という選択肢だけじゃなく、SPSS Modeler + Pythonは便利だよ!ということでした。

さて。ディープラーニング的な世界になっても、やはり変わらぬのは変数職人だと思うのです。老害と呼べばいいさ。こんなニュースもありました。
ソフトバンク、新卒採用にAIを活用 エントリーシートの評価を補助

このテーマは有効としか思えないですね。膨大な数の中の候補から、ある程度の候補に絞り込む、しかも効きそうな変数も明確。現時点では自由記述欄の評価だけみたいですが。

精度を上げるためには、全項目を突っ込むのは必須。ただ、たとえば自社の若手総合職従業員数千人の評価付きデータから大学>学部だけをAIと呼ぶものに突っ込んでも、スッカスカで効かないはずなので、その学部の偏差値データと突き合わせると効くようになるはずです。ただ、大学>学部名の自由記述と予備校から仕入れた偏差値データの大学>学部名のマスタは完全一致しないので、表記ゆれを解消したり、欠損を推測したりする必要がでてくる。個人的には、こうした手間を勝手にやってくれる「AI」の方がありがたい。データサイエンティストのアシスタントとでも言うべきか。「これは大学>学部データだから、この偏差値データと結合してくれ」と言わなくても勝手にやっておいてくれる、優秀なアシスタント。「理工学部情報工学科」と「工学部情報学科」を同じとみなしてくれるアシスタント。バラバラなフォーマットの履歴書をスキャンしたら、
{
  "univercity": {
    "name": "渋谷大学",
    "id": "123",
    "department": {
      "name": "情報学部",
      "dept_id": 3
    }
  }
}
というJSONを作ってくれるアシスタント。正規化とデータ種別自動判別と自動結合。あとは無限のコンピュータリソースに膨大な変数ごと投げちゃえば、きっと計算してくれる。

人工知能(AI)バブルが日に日に大きくなっているのだけれど、SFじゃないので、機械への教え方が変わったくらいの認識に留めておくほうが良いのではないかと思う今日このごろ。

以前はもう少し文章まともに書けた気がするのだけれど、今日のリハビリはこれまで。
さて、AWS Summitへでかけよう。

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