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「ビッグデータ」という言葉を聞かない日はないくらいの馬鹿騒ぎで、データマイナーはすっかり引く手数多の職業になりました。ただ、SI業界がこれまでムーブメントを起こしてきた数々のワードと同様、多くの"ビッグデータプロジェクト"は失敗することになると思います。ERP, BPR, BI, CRMなどなど…

ビッグデータにまつわる職業の中でも、データを分析するデータマイナーに絞っての話をしたいと思います。また、データ分析専門会社にてコンサルティング業をするデータマイナーは今日の話は当てはまりません。さて。データマイニングを知らない方々は、企業においてどのようなデータマイナーがいれば成果を上げられるのかの明確なイメージは持っていないと思います。これだけたくさんのデータがあるんだから、すごい技術を持った人ならなんとかしてくれるに違いない、と。最高学府の修士・博士で、よくわからないけどすごいアルゴリズムを作ったらしい人を採用すれば、きっと何かすごいことが起きるのではないかと。でも多くの場合、成果を上げるデータマイナーは技術や頭脳ではなく、ビジネスを理解しているデータマイナーだなぁと、個人的な少ないサンプルでの検証結果からはそう思います。

天才的な頭脳を持ったデータマイナーと、ビジネスを理解したデータマイナーは別の職種と言うべきで、それぞれ成果を出せるフィールドは全く異なります。特定用途をうまくこなす目的のアルゴリズムを考え出す人と、ビジネスを目的としてアルゴリズムをひとつの手段として使う人の違いと言い換えられるかもしれません。

たとえば、Googleの検索エンジンは前者の賜物です。ユーザーが入力したキーワードに対して、適切なURLをランキングするという、超ピュアな技術。一方、Googleのアドワーズは後者の賜物です。CPC x 品質スコアという仕組み、そして品質スコアの算出式。それによって数多の人間はどう入稿設定し、広告設定DBはどういう状態になり、クエリごとにどう広告ランキングが構成されるのかを想定しながら仕組みを作る。ここではデータマイニングは入力変数なだけであって、ほとんどは制度設計がポイント。

企業で本当に必要とされている職能は、ほとんどの場合はピュアな技術ではなく、データマイニングを活用した制度設計にあるのではないかと思います。(メカニズムデザインという言葉の方が適切なのかしら。)データマイニング技術の小さな差がビジネス上大きな差を生む領域はレアで、データマイニング結果をどうブレンドしてどう使われるかが勝負を分けていることが圧倒的に多いと思う。数字をビジネスに落とし込むためのルール作りとでもいいましょうか。

たとえば、5年くらい前までのアドネットワークというのはコンテンツマッチの精度が云々という議論はあったのだけれど、結局は広告DBがどれだけ充実させられるビジネスの仕組みなのかの勝負だった。そして勝者のみポジティブフィードバックに入る。(ちなみにコンテンツ認識技術と広告とのマッチングというのは全くの別物。前者がピュアな技術。)それが、行動ターゲティングによってルールが根底から覆る。さらに、オーディエンスターゲティング×RTBによってもう一回根底からひっくり返った。あっという間に。オーディエンスが何に興味関心を持っているかを判別するのはピュアな技術だけど、それをどう広告と結びつけていくらで入札するシステムを設計するかはビジネスを知らないとできない。

データマイナーを募集している企業の多くはデータを分析できる人がいないから採用したいのだと思いますが、採用するときにはここを間違えると痛い目に遭うと思います。ビジネス感覚の無い/ビジネスに興味の無いデータマイナーを雇うと苦労するし、逆に天才的頭脳を持っていない僕ら一般のデータマイナーはビジネスをわかってないとブームが去った後に路頭に迷っちゃうから現場に出ましょうねと。

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2011年の総括ブログがたくさん上がってきたのに触発されて、今年9本目のエントリーを書こうと思います。わかりやすい記事を書こうとすると筆が進まないので、誰が理解できんだよ的エントリーを連発してやろうかと思っている今日この頃です。

さて。2011年は兎にも角にも自分でも信じられない勢いで自社DSPが浸透したことに尽きます。創業以来最大の出来事じゃないかと思います。アドネットワークからDSPへの移行の中でアルゴリズムを作っている人間として思うところは、DSPではアルゴリズムが競争力となり、顧客の為のアルゴリズムが自社にも強烈に跳ね返ってくるという、至極あたりまえの世界になったことがなりよりうれしく。

アドネットワークにおけるアルゴリズムには、大きく分けて二つあります。ターゲティングのアルゴリズムとアドネットワーク事業者としての収益を最大化させるアルゴリズムです。ターゲティングのアルゴリズムは、誰にどの広告を配信するかを決めるオーディエンスターゲティングやどういったコンテンツに広告を配信するかを決めるコンテンツ連動型広告といったものがあります。これらのアルゴリズムの目的は、広告主にとって広告効果を高めることにあります。マーケティングプロモーションの世界の考え方です。

一方、アドネットワーク事業者の収益を最大化させるためのアルゴリズムの目的は、仕入値と売値が大きく異なるアドネットワーク事業者が卸売業としての利益を最大化することにあります。一般的な金融の世界の考え方のアービトラージモデルです。マイクロアドでは、このアルゴリズムはほぼ無いに等しいのですが、成功したアドネットワーク事業者はこのアルゴリズムが中心になっているでしょう。(テキスト広告の場合はほとんどがレベニューシェアモデルのため今回の話は別件。バナーの世界のお話。)

ではDSPは?DSPはRTB仕入れでCPM販売だという前提のもとで話を進めます。 まず、仕入値と売値の差額はマージン率で設定されるため、DSP事業者としては自社の流通総額を最大化することが収益の最大化になります。つまり、顧客をとにかく増やし、満足してもらえる広告配信を行う必要がある。そのためにターゲティングのアルゴリズムを使う。そして、顧客のためにできる限りインプレッションを安く仕入れられるようなアルゴリズムを使う。DSP事業者が自社の収益を最大化するためのアルゴリズムはいらない。顧客のために最善を尽くすことが自社の収益になるという、あたり前の世界がようやく。

アドエクスチェンジの国はアドネットワークの国とは違って政治の無いオープンに接続されたドライな世界。アルゴリズムで適切に値付けした者が勝ち。アドネットワークで重要だったのは、豊富な広告在庫を生み出す仕組みや営業の仕組みで、アルゴリズムは助演だった。アルゴリズムは重要なのだけれど、本当に勝負を分けているのはアルゴリズムでは無かった。ところが、RTBのDSPではアルゴリズムが主演になった。

数百数千社の膨大な広告主が、それぞれに満足する絞り込まれたターゲティングをかけながらインプレッション争奪競争を24時間365日繰り広げる。これで媒体収益が上がらないはずもなく。単一アドネットワークとは比較にならないほど。

2012年はメディアの純広が進化し、アドネットワークには出稿していなかった広告主がDSPを通じて出稿するようになり、スマホのRTBがはじまる。これまでいろんな業界で破壊的イノベーションによって企業の浮沈やパラダイムシフトを他人行儀に眺めてきたけれど、僕らの世界にもRTBというガチの破壊的イノベーションがやってきたようです。きっと来年の今頃は、数年前の業務を思い出しては自分たちのやっていたことに恥ずかしくなっちゃうに違いありません。ボクが白シャツをINしていた頃を思い出す時のように。

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先日行いました、ad:tech Tokyo 2011でのMicroAdによるワークショップの資料をアップロードしました。
自らの過去のビジネスをも切って捨てることが許されてしまうこの社風。
これがベンチャーのいいとこです。変なしがらみが無いからね。

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昨年ご好評いただきました、ad:tech Tokyoでのワークショップですが、今年もやります

昨年は来るべく未来に備え、アドエクスチェンジ生態系の各プレーヤーの役割を紹介しましたが、今年はそのあたりはもう周知のこととなったので、今回は毛色を変えてやる予定です。(まだ一枚もスライドができていないというこの現実からの逃避的投稿。)

広告枠からオーディエンスデータへ。
広告メニューからRTBへ。
アドネットワークからDSP・SSPへ。
メディアプランニングはロボットへ。

そんな変化について、お話しできればと。


アドテック東京 ワークショップ
http://www.adtech-tokyo.com/ja/exhibitor/work.html
 
10月27日(木) 16:00-16:40
Workshop B
株式会社マイクロアド 
DSPによるディスプレイ広告のパラダイムシフト

"広告メニューの時代"は終わりを告げようとしています。ディスプレイ広告の主役の座は、オーディエンスデータを自在に活用してターゲティング配信を行うDSPへ。
DSPを活用すれば、リスティング広告のようにディスプレイ広告への入札・運用が可能に。
いよいよ日本でも本格的普及期に突入したアドエクスチェンジからのメディアバイイング手法と、そのパラダイムシフトをわかりやすく解説します。 
 もちろん無料パスでOK!!

プライベートエクスチェンジとは

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《連載》ネット広告エコシステム
第一回:Ad Exchange(アドエクスチェンジ)とは
第二回:DSP(Demand-Side Platform)とは
第三回:Yield Optimizationとは
第四回:RTB(Real-Time Bidding)とは
第五回:Data Exchanger(データエクスチェンジャー)とは
第六回:プライベートエクスチェンジとは

アドエクスチェンジ系の話題がグイグイ来ております今日この頃、一年ぶりに連載記事。まだ終わっちゃいねぇんダゼ!

本日はプライベートエクスチェンジ(Private Exchange, Private Marketplace)についてですが、重いペンをとったのも大御所Google氏がプライベートエクスチェンジの機能をリリース(英文)したためです。

83692761_73a3fd55c3_mそもそもプライベートエクスチェンジとは、メディア側がアドエクスチェンジへプレミアムな広告枠のインプレッションを流しやすくするためのものです。一般のアドエクスチェンジでは販売価格は市場原理に任せる訳ですが、アドエクスチェンジに流すことで(1)価格が下落する恐れがある (2)純広告の販売に悪影響が出る恐れがある といった懸念がありました。それを解決します。本日Googleがリリースした"Ad Exchange Direct Deals"はメディアと広告主(代理店)が事前に人間同士で価格交渉を行い、価格を決定するものです。がっちり価格を決めうちするのではなく、限られた入札者にだけ入札を許し、それぞれに最低入札単価を決められる機能も同様にプライベートエクスチェンジです。オークションでも固定価格でもプライベートエクスチェンジ。さらに申込書のやり取りなどの業務もDSPやエージェンシートレーディングデスクで完了するので無駄な業務を省けるし、事前の掲載可否が行えるといったメディア側にとって多くのメリットのあるものです。

いやはやDSPというのは大変ドライなもので、コンバージョンにつながる確率などでインプレッションの価格を決めてしまいます。蓮舫さんを想像していただければと思います。アルゴリズムベースのDSPによるRTBというのは、東証アローヘッドでのアルゴリズム取引と同じです。流れてくるニュースや値動きなどをロボットが読み込み、瞬時に株式などを売買します。ちなみにDSPも証券取引も、経験と勘はアルゴリズム化されています。

ということで、どれだけ純広告の価格が高くても、どれだけ代理店&広告主にとって高い広告枠ブランド力を持っていたとしても、広告効果でドライに査定されてしまう。また、純広告で販売されている広告枠がアドエクスチェンジでも購入できるならば、多くの広告主はアドエクスチェンジから購入したがる。広告メニューというバルクではなく、広告主が思い通りにターゲティングしたオーディエンスがその枠を訪問したインプレッションだけを買うことができ、しかもCPMが安価かもしれないからです。必然的に、純広告が売れる枠は空き枠が出てもアドエクスチェンジへは流さず自社広告を流し、これまでアドネットワークに流していた枠がアドエクスチェンジへと流れるという構造になりがちでした。

それに対するソリューションとしては、匿名でアドエクスチェンジ上で販売する手法があります。DSP側から見ると、枠が暗号になっています。たとえば、Lady.jpという女性向けメジャーポータルのファーストビュー内レクタングルが仮にあったら、DSPからは枠情報は「fwaw3efhae(300x250)」のようにしか見えない。だから、広告配信後の結果勝負。でも、本当はプレミアムな枠なのに純広告とのカニバリゼーションのために匿名にすることでメディアのブランド力も削ぎ落され、CPAだけの世界で査定されるなんて我慢ならねぇ!と。そして生まれたのがプライベートエクスチェンジ。限られた広告主(代理店)にだけ入札や交渉が許されます。人間による人間臭い交渉の結果、RTBというデジタル信号を通じて猛烈に売買は執行されるわけです。

実に合理的でデジタル的なRTBによるDSP・アドエクスチェンジ間の売買という世界ですが、デジタル合理世界とは相容れないもう一つの世界があります。そこにRTBという文明の利器を導入するため生まれたのがプライベートエクスチェンジ。本質はRTBにあります。広告主が各々ターゲティングできるインプレッションだけを仕入れることができることにあります。RTBは「1インプレッション単位で入札額を」と説明され入札額がフォーカスされがちだけど、自由にユーザーを選別できるというメリットの方が実は大きい。個人的にはこっちの方が断然大きいと思っている。いや、わかっている人はみんなわかってると思う。説明が面倒なだけだ。

4470004722_5d0404c74d_m同じメディア・同じ枠のインプレッションでも、広告主ごとに欲しいインプレッションは違う。見ているユーザーは全然違うからだ。メディア側からはRTBはインプレッションをつまみ食いされるのではないかと心配される。ただ、猛烈なつまみ食いデマンド(需要)が存在しているとしたらどうだろう。

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