SPSSがIBMに買収される
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今日もSPSSのソフトを10時間触り続けて疲れてヘトヘトですが、この記事については書かないといけないという勝手な使命感。
IBM、統計解析のSPSSを12億ドルで買収へ--ビジネス分析領域を拡大
IBMは7月28日(米国時間)、統計解析パッケージのSPSSとの間で買収の合意に達したことを発表した。1株あたり50ドルの現金による買収で、総額は約12億ドル規模に上る。2009年後半に買収を完了する見込み。
IBMはSPSSの獲得によって、ITシステム基盤の戦略「Information on Demand」と「Information Agenda」を推進し、関連製品を強化したい考え。今回の買収では、同社が先頃発表した新サービスと組織「Business Analytics and Optimization」(BAO)なども強化される見込みだ。
ということで、俺の中でAppleとGoogleのロゴに次ぐくらいのブランド価値を持つSPSSが、突然巨象IBMとの買収に合意の発表
俺の使っているSPSSのデータマイニングソフト、PASW Modeler(旧称SPSS Clementine)は「ブラボー!!」では足りないくらいの賛辞を贈りたい優秀なソフト。データマイニングの試行錯誤プロセス支援を徹底的に突き詰めてる。
さて、統計解析ソフトやデータマイニングソフトは、現在世界でSASとSPSSの二社が双璧になっていて、それ以外はほとんど滅びてしまいました。以前はIBMもIntelligent Minerというデータマイニングソフトを提供していましたが、今では話を聞くことも滅多に無くなりもうした。
SASとSPSSの違いは、SASがBI(Business Intelligence)を中心とした「会議室な感じ」に対して、SPSSがマーケターや教育世界を中心とした「占い師な感じ」。ソフトの核は同じことやってんだけど。で、「会議室な感じ」の巨人であるIBMは絶対SASを欲しかったと思うんだけど、おそらくSPSSのキャッシュが無くなって棚ぼたで買っちゃったってことだと思います。
さて、Business Intelligenceとは、企業内に散らばる情報を集約して、そこから有益な情報を抽出することが中心。「君、エレクトロラックスのコーヒーメーカーの売上が神戸ですこぶる良いじゃないか、君!」的世界。なので、数学や統計学的な世界よりも、めちゃくちゃすごいExcelといったイメージに近い(ユーザーの表面上は)。コックピットで操縦するみたいな満足感と共に。で、ここの予算の出所は大企業の経営企画や大規模営業組織とかだったりで、ドーンと予算が振られて、その投資効果の検証は金額ではできないし、金額もデカい。
一方、「誰にDMを送るか」とかのマーケターの世界のデータマイニングは「この人はエレクトロラックスのコーヒーメーカーを買う確率は2.3%かもね」的世界。顧客は金融だったり小売だったりリサーチ系企業だったりで、「通常時(ランダム)よりもどれだけ効率が上がったか」が勝負で、投資効果が通常時との差額という金額で出てくるし、その差額ってば雀の涙だから担当者の涙もちょちょぎれる。(莫大なマネートラフィックの発生する金融や、メーカーでの歩留まり率、医薬の検定とかはもちろんクリティカルなのだけども)
つまり、「会議室」を相手にしたSASが生き残って、「占い師」を相手にしていたSPSSは、この不況で真っ先に予算が削られてしまった、というのが俺の想定するシナリオ。
正直、BIに関してはエラい人たちの意思決定のための精神安定剤としか思ってないので、個人的にはBI系のベンダーに転職するとかはまず無い。経営の意思決定やマネージャーの戦略策定においては、材料がある方が安心して決断できる。だけど、企業内にあるデータで有益なものって、すごく少ないし、データに精通してないと情報を読み誤るし、結局は都合の良いでっちあげになってしまうと思うのだよな。
IBMに買収されるからと言ってSPSSが変わっちゃうわけじゃないんだけど、買収後に「会議室」側の機能拡充ばかり注力させられ、学会で認められた新アルゴリズムの取り込みとかが遅れだしたらちょっと嫌だなぁ、と。開発のリソース配分として。
俺の業務時間、SPSS:MySQL:Chrome:Others=6:1:2:1くらいなんだが、この数ヶ月でMySQLを保有するSUNもOracleに買われて行くし、もうなんだかこの世の果てだなぁ。