『トリプルメディアマーケティング』を読んで考えた未来のメトリックス
- カテゴリ:
- Data Mining
ソーシャルメディア、自社メディア、広告の連携戦略
著者:横山 隆治
販売元:インプレスジャパン
発売日:2010-06-25
ADKインタラクティブの横山さんの新著を読みました。既存の広告枠などの買うメディアを"Paid Media"、自社サイトなどの所有するメディアを"Owned Media"、CGMなどのクチコミやパブなどの信頼や評判を得るメディアを"Earned Media"と定義し、その戦略について書かれており、大変勉強になります。特に日頃CPAに血眼になっている方のほうが読まれた方が良いかもしれません。CPAというワードは一ヶ所も出てこない気がします。トリプルメディア×自己関与度&情緒・理性的購買×パーチェスファネルのマトリックスが好きです(p.36)。そして広告会社はメディアハンドリングの暗黙知がキーになっていくのだろうなぁと思いました。アルゴリズムやオペレーションではなく、暗黙知。
さて。私はこれまで「ソーシャル」という言葉には正直あまり興味を持っていなかったのですが、俄然興味が湧いてきました。きっと、Eaned MediaとOwned Mediaは測定してもらいたがっているんじゃないかと。これまで、広告枠であるPaid Mediaの効果測定は行われてきましたが、EanedとOwnedはCPAのような明快な基準が設けられず、測定が難しい。それゆえにOwned Mediaの企画は売りにくく、価値も上がりづらい。ブログ・SNS・クチコミサイトなどのEaned Mediaの広告枠はCPAが良くないことが多く、CPMは極限まで落ちる。広告枠としての価値が低くとも、コンテンツの価値があったかもしれないのに。本当はオーディエンスの態度変容を導いたダイヤモンドが埋まっていたかもしれないのに!
そこで、アトリビューションモデリングをさらに拡張すれば良いのではないかと。アトリビューションモデリングとは、アシストやポストインプレッション(ビュースルー)効果を拡張したようなものですが、それにトリプルメディアの概念を入れるべきなんじゃないかと。これまで私はオーディエンス行動データと広告主サイトのデータを統合した分析はしてきたんだけれども、広告主サイト内でオーディエンスの意識がどう変わったかについては考えていなかった。ただ、ここは非常に重要であり、測定すべきポイントなのだろうなぁと。
前提として、オーディエンス行動データ(NOTオーディエンスカテゴリ)と広告主サイト訪問データ(NOTサマライズドデータ)が統合されている必要がある。ただ、たとえば私の勤務する会社では広告枠データと広告主サイト訪問データを合わせると月間2.5億UB(ユニークブラウザ)以上あるのだけれど、これでも行動データの方はまだまだ足りない。行動は欠けてばっかりさ。これを仮にどこかの一社で囲い込もうとしても絶対に無理で、お互いの価値向上のために手を携える必要がある。
そして、広告主サイト内でのオーディエンスの態度変容みたいなものはデータの取得可能性の面でもコストの面でもテーマの面でもアカデミック世界ががんばったらいいのではないかなと。企業は儲かりづらくて霧のかかった領域には進みづらい。たとえば正確なテキストマイニングだけができたとしてもお金儲けは難しいのだけれど、オーディエンスの態度変容を導いたコンテンツを浮かび上がらせる技術ができれば売れる、とか。とても資金の乏しいベンチャーの人材の時間を使っては研究できない。学会ではクロールデータとかWikipediaとかSBMとか過去の新聞やメールデータとかの解析を目にすることが多いんだけれど、特定広告主サイトのログデータだったら協力するところがあると思うのだけれど。(商学部がんばれ!出身学部として)
広告は「生活者に買ってもらうにはどうしたらいいの?」という問いへの回答だったんだけれど、今後は「なぜそのお客様は買おうかなと思うようになったの?」という問いへの回答を導き出し(メトリックス)、その回答から広告やメディア最適化するような流れになれば、面白いなぁ。