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監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
★★★★☆
モロッコの少年が放った銃弾が、アメリカ人妻の肩に直撃する。モロッコ・メキシコ・アメリカ・日本を舞台にバラバラのストーリーが進行する。

言わば『21世紀のバベルの塔』、いや『9.11以降のバベルの塔』かもしれない。

バベルの塔を知らない方のために。「バベルの塔」とは、旧約聖書に出てくる逸話。昔、人間達は名を馳せようと天まで届くような塔を築こうとした。しかし神を怒らせ、それまでひとつだった言語はバラバラさせられ、結局塔を完成させることはできなかった。
つまりは神はコミュニケーションを断絶させることで相互理解を崩壊させ、プロジェクトを崩壊に導いた。というのが「バベルの塔」。

この映画で延々と描かれるのは人種・言語・宗教・国家などの断絶。そしてラストに向けて…と。なぜこうも地球人はバラバラになってしまったのか。理解しあえないのか。菊池凛子が話題になりましたが、菊池凛子の演技がすさまじく良いというよりは、役がすさまじく良いのでは?この聾唖の少女が無かったら、イマイチな映画だったかもしれない。

ちょっと残念なのは日本人から見る日本のシーンに違和感があること。もうちょっと日本のスタッフに権限委譲すべきだったんじゃないかと。あとは日本語台詞ももっとブラッシュアップが必要だったんじゃないかと。日本人的にはそう思います。J-POPカフェがそのまんまの場所そのまんまの名前で出てきて個人的にウケたけど。しかもあの席座ったことあるたぶん。

ちなみに、ウィーンで絵画『バベルの塔』(ブリューゲル)を見てきました。筆舌し難いものがあります、あの画には。20分くらい呆然と立ち尽くして眺めていました。ブリューゲルの作品は、他の絵画とは圧倒的に違う何かを感じます。絵画のことはよくわからないですが、とにかくすごい。日本に来る機会があったら絶対に見るべき。

頭の中をさまざまな"valley"が巡って眠れません。