電子チケットはなぜ失敗したか
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ぴあが電子チケットサービスから完全撤退していた。。
電子チケットとは、ICカードやケータイを使って、コンサートや映画などのこれまでの紙のチケットを置き換えてしまおうというサービス。チケットのデータをネットを通じてダウンロードするわけです。
で、俺は前職んとき、このICカードを拡販する仕事をしてた。
ちょっと感慨深い事件だったので、書いてみる。もう関わってないし、ディスクローズ情報だけを基に書くのでだいじょうぶっしょ。
奇しくもANAが紙のチケットを完全に廃止すると発表している裏で、なぜぴあの電子チケットは、あれほど気合いを入れていたにも関わらず失敗したのか。
やっぱ一番の原因はR/W(リーダライター;Suicaでいう改札・Edyでいうレジのとこ)を会場に普及させられなかったところにあると思う。イベント会場や映画館にとっては、R/Wを設置するモチベーションをなにも持ってない。それどころか、R/Wを置くことでもろもろのオペレーションコストがかかる。それに対して、SuicaやANAのような交通系は、改札部分が自社の所有であるため、(当初莫大なコストを負担するが)自らの意志で一気にインフラを整えることが可能。Edyは資本関係を使いつつインフラ(店舗)を広げているけど、結構キツそう、マージンとか。
電子マネーなどの議論で、インフラと利用者のどちらかが増えないと普及フェーズに入らないという鶏卵議論が以前活発にあったけど、ほぼ答えは出たと言っていいのではないかな。交通系のモデルがきっと正解。自社でインフラ整備→利用者の利便性が圧倒的に高まる→利用者増加→利用者のパワーを使って、競合はそのインフラを利用しないと負ける環境を作り出す。
といっても、今後はR/Wの共用化がさらに進み、ひとつのR/WでEdyもSuicaもiDもみんな使えるようになると思いますが。織田・豊臣に敵わないと判断した(負け組)大名が友好関係を築いたように。DVD-RW/RAM/+RWも結局みんな使えるし。メーカーは売れるからそれを作るし、店舗はたくさんの電子マネーが使える方が喜ばれるし。電子マネー事業者が自社や資本関係の圏内からネットワークを広げるためには、開放路線でないとキツい。
で、インフラ部分のR/Wは共通化されるが、各電子マネーはバラバラのままに。きっとそれでいい。囲い込みの要素は必要だし、そうでなければ現金で決済してもらった方がいいし。
閑話休題。
ぴあはチケット界で独占的な地位であったにも関わらず、会場にR/Wを普及させることができなかった。さらに問題なのが、一般人はぴあのチケットは年間0〜3回くらいしか使わないこと。これだけのためにカードを作ったりしないよね。やっぱり本命はケータイ。ケータイでチケット探して、ケータイにチケットをダウンロード。でも、上記の理由でほとんどの会場では電子チケットを使えなかったから、卵が孵化しなかった。
そもそもチケットとは、権利を証明するもの。”私はこのコンサートに入場する権利を持っていますよ”のしるし。つまり、紙が無くても、なんらかの方法で権利を証明できればいいって話で、電子的な認証システム登場ってなわけで電子チケットなわけです。(お金も、そもそもは金[キン]と交換できる権利、のはず。)だけど、この重厚な電子認証システムはどうやら不要だったらしい。もっとライトなシステム、例えば、バーコード読み取り機に無線LANが埋め込まれてる小さな安価なハンディ端末でケータイのバーコードを係員が読み取る仕組みだったらまだマシだったのかもしれない。コンサート会場や映画館という会場の仕組み上、人間が介在せざるを得ないし、改札を作るなんてとんでもない。
お金もコンサートチケットも航空券もポイントサービスも、みんな同じ権利の認証だし、システムも兄弟だけど、プレイヤーや環境によって電子化の成立可能性がぜんぜん違ってくる。机上で合理的に考えればうまく行くはずなのに。ビジネスってこれだからおもしろいのよね
