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《連載》ネット広告エコシステム
第一回:Ad Exchange(アドエクスチェンジ)とは
第二回:DSP(Demand-Side Platform)とは
第三回:Yield Optimizationとは
第四回:RTB(Real-Time Bidding)とは
第五回:Data Exchanger(データエクスチェンジャー)とは

本日はネット広告エコシステム連載の第三回。Yield Optimization(イールドオプティマイゼーション)と呼ばれるサービスについて。

Ad Exchangeは市場、DSPは広告主の効果を最大化するもの、そしてYield Optimizationは媒体(メディア)側の収益を最大化させるものです。市場は需要と供給によって成り立つわけですが、需要側が広告主側、供給側が媒体側にあたります。そのためDemand-side Platform (DSP)の逆の存在として、Supply-side Platform (SSP)とも呼ばれます。なお、"Yield"とは収益や収穫高といった意味合いの言葉です。Yield Optimizer、Yield ManagementやPublisher Optimizationといった呼び方をされることもあります。

Yield Optimizerが何をやっているかといえば、元々は複数のアドネットワークを収益を最大化させるように回すということでした。フリークエンシーはCTRにとって非常に大きな要素であるため、複数アドネットワークのフリークエンシーを最適化したり、米国では地域がマーケティングにとって非常に重要ですし、英語圏であれば国外アクセスも多くあるためエリアでアドネットワークを制御したり。しかし、最近では、Audience Data、つまりはcookieを利用した行動ターゲティング等によって付加価値をつけた上での販売にシフトしています。その他にも、媒体が自らのオーディエンスを分析することができる機能や、行動履歴の販売といった様々な分野にも展開しています。

これらが意味するところは、『サイトが外側とつながる』ということに尽きます。まずは媒体側の視点から見てみます。たとえば、サイトカタリストやGoogle Analyticsでの分析結果を広告ビジネスに活かすことができるでしょうか?広告配信結果をExcelや独自システムで分析することで広告ビジネスに活かすことができるでしょうか?限りなくNoに近いYesだと思います。そこである程度の知見を得ることができても、デプロイできないためです。「なるほど。で、どうすんの?」です。

自サイトだけの情報では、オーディエンスがどんな人かの情報は極めて限定的です。自サイトのスポーツカテゴリを閲覧した人はスポーツ好き?それよりも、外部サイトでスポーツ用品を買おうとしている人の方が強いインテントを持っています。これらの情報を突き合わせることが付加価値を生みます。しかも、自サイトのスポーツカテゴリを閲覧するオーディエンスは何人いるでしょう?一ヶ月3万円分しか消化しない広告メニューは作れません。これを複数のサイトでまとめることで、販売が可能となります。

視点をYield Optimizer側に変えてみます。Yield Optimizerはcookie帳を持っていますので、impressionのリクエストが来た段階で、どのアドネットワークやAd Exchangeが最も収益を上げるかを予測することができます。Yield Optimizer大手のPubMaticがよく言っていることですが、現在一般的な手法である平均eCPM(RPM)の高い順にアドネットワークを数珠繋ぎにしてもダメです。早稲田の落ちこぼれよりも明治の優秀な学生の方が企業にとって必要な人材であるのと同様です。(きっちり説明したいけど長くなるので省略。)

さらに視点を需要側に変えます。代理店や広告主からYield Optimizerを見るとAd Exchangeと同様に見えます。ただし、Ad Exchangeを通じても売買されます。(これも省略)

Yield OptimizerはDSP以上にイメージしづらいかもしれません。ただ、この世界を知れば知るほど、これは機能するなぁと思うようになるはずです。そして、2010年の日本にYield Optimizerを輸入しても、まったく機能しないというのも確からしい事実。まったく違うエコシステムに"優れた"遺伝子を持つ生物を放流しても死んでしまいます。ふぇっふぇっふぇ。