カテゴリ:
《連載》ネット広告エコシステム
第一回:Ad Exchange(アドエクスチェンジ)とは
第二回:DSP(Demand-Side Platform)とは
第三回:Yield Optimizationとは
第四回:RTB(Real-Time Bidding)とは
第五回:Data Exchanger(データエクスチェンジャー)とは

前回の投稿からだいぶ間が空きましたが、ネット広告エコシステム連載の第五回はData Exchanger(データエクスチェンジャー)についてです。単にData Exchange(データエクスチェンジ)とも。正直、日本の実体が整わないままワードを煽ってもバブルを呼ぶだけなので、あえてアドエクスチェンジネタは抑えていたのですが、方針転換です。

データエクスチェンジャーとは。まず、彼らは複数のメディアから提供されたオーディエンスの行動履歴やその他データ保有企業のデータを取りまとめ、カテゴライズします。次に、彼らと接続されたDSPを経由してデータが代理店に販売されたり、接続されたアドネットワークに販売されます。もちろんこのモデルに限りませんが。つまり、集積(Aggregate)+分類(Categorize)+卸(Exchange)+流通(API)。必然的に、データ提供者の匿名化と生活者側のプライバシーへの対策も一元的にできる。

たとえば、ある代理店がDSPを利用し、あるデータエクスチェンジャーのコンパクトカーカテゴリをチェックして配信すると、過去に自動車専門サイトのコンパクトカーのページを閲覧したり検索したオーディエンスに対して配信されます。その自動車専門サイトは複数であるという点がポイントです。

さて、これらのデータの提供者はデータプロバイダ(Data Provider)と呼ばれますが、これが多様です。日本でも馴染み深いウェブ上での行動履歴を提供するものが基本ですが、デモグラフィックデータ、オフラインデータ、企業データ、検索ワードなどを提供するプレーヤーが存在します。それぞれ歴史的な経緯がありますが、ここでは深く触れません。

ターゲティングのカテゴリは細かくすればするほど基本的に広告効果は良くなりますが、一方で対象オーディエンス数は減少し販売困難になります。その問題へのソリューションがまさにデータエクスチェンジャーのモデルです。集積によりデータのボリュームを生み出し、分類により細かいカテゴリを扱いやすく、アドエクスチェンジの膨大な広告枠を利用して配信できるわけです。

非常に重要なことは、カテゴライズされたデータと一言で言っても、中身は全く異なるということです。あるポータルのサッカー面のページを見た人は、一ヶ月以内にサッカー用品を買うでしょうか?興味・関心と購買意向は、まったく違うものです。(相関はもちろんあるでしょう。)データエクスチェンジャーは、購買意欲のある(in-Market)興味関心カテゴリを整備していることを売り物にしています。サッカー好きの中で、まさにサッカー用品を買おうとしている人の比率は数%でしょう。言ってしまえば、サッカー好きのデータなどありふれていて売れませんが、サッカー用品を買おうとしている人のデータは高値で売れます。

現在のネット広告の価格は適正化されていません。何らかの強い購買&申込インテントを持ったオーディエンスが訪問する専門サイト・ECサイトが得られる収益はあまりにも小さい。勝間さん風に言えば、メディアサイトとファンクションサイトとは全く別であって、広告収益はメディアサイトに偏っています。ちゃんこダイニング若のニュースを閲覧する「ビジネス面」のeCPMを、専門サイトのeCPMが下回っていて良いはずが無いし、データの価値も専門サイトが断然上回らなければならない。こうしたミスマッチを是正するのがデータエクスチェンジャーの役割でもあると考えています。