誰が為のアルゴリズム
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さて。2011年は兎にも角にも自分でも信じられない勢いで自社DSPが浸透したことに尽きます。創業以来最大の出来事じゃないかと思います。アドネットワークからDSPへの移行の中でアルゴリズムを作っている人間として思うところは、DSPではアルゴリズムが競争力となり、顧客の為のアルゴリズムが自社にも強烈に跳ね返ってくるという、至極あたりまえの世界になったことがなりよりうれしく。
アドネットワークにおけるアルゴリズムには、大きく分けて二つあります。ターゲティングのアルゴリズムとアドネットワーク事業者としての収益を最大化させるアルゴリズムです。ターゲティングのアルゴリズムは、誰にどの広告を配信するかを決めるオーディエンスターゲティングやどういったコンテンツに広告を配信するかを決めるコンテンツ連動型広告といったものがあります。これらのアルゴリズムの目的は、広告主にとって広告効果を高めることにあります。マーケティングプロモーションの世界の考え方です。
一方、アドネットワーク事業者の収益を最大化させるためのアルゴリズムの目的は、仕入値と売値が大きく異なるアドネットワーク事業者が卸売業としての利益を最大化することにあります。一般的な金融の世界の考え方のアービトラージモデルです。マイクロアドでは、このアルゴリズムはほぼ無いに等しいのですが、成功したアドネットワーク事業者はこのアルゴリズムが中心になっているでしょう。(テキスト広告の場合はほとんどがレベニューシェアモデルのため今回の話は別件。バナーの世界のお話。)
ではDSPは?DSPはRTB仕入れでCPM販売だという前提のもとで話を進めます。 まず、仕入値と売値の差額はマージン率で設定されるため、DSP事業者としては自社の流通総額を最大化することが収益の最大化になります。つまり、顧客をとにかく増やし、満足してもらえる広告配信を行う必要がある。そのためにターゲティングのアルゴリズムを使う。そして、顧客のためにできる限りインプレッションを安く仕入れられるようなアルゴリズムを使う。DSP事業者が自社の収益を最大化するためのアルゴリズムはいらない。顧客のために最善を尽くすことが自社の収益になるという、あたり前の世界がようやく。
アドエクスチェンジの国はアドネットワークの国とは違って政治の無いオープンに接続されたドライな世界。アルゴリズムで適切に値付けした者が勝ち。アドネットワークで重要だったのは、豊富な広告在庫を生み出す仕組みや営業の仕組みで、アルゴリズムは助演だった。アルゴリズムは重要なのだけれど、本当に勝負を分けているのはアルゴリズムでは無かった。ところが、RTBのDSPではアルゴリズムが主演になった。
数百数千社の膨大な広告主が、それぞれに満足する絞り込まれたターゲティングをかけながらインプレッション争奪競争を24時間365日繰り広げる。これで媒体収益が上がらないはずもなく。単一アドネットワークとは比較にならないほど。
2012年はメディアの純広が進化し、アドネットワークには出稿していなかった広告主がDSPを通じて出稿するようになり、スマホのRTBがはじまる。これまでいろんな業界で破壊的イノベーションによって企業の浮沈やパラダイムシフトを他人行儀に眺めてきたけれど、僕らの世界にもRTBというガチの破壊的イノベーションがやってきたようです。きっと来年の今頃は、数年前の業務を思い出しては自分たちのやっていたことに恥ずかしくなっちゃうに違いありません。ボクが白シャツをINしていた頃を思い出す時のように。