統合完了と再始動 ―AIに絶望し、AIと共に生きることを決めた男の記録―
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すべての道は渋谷に通ず
株式会社ジオロジックが2021年10月にSmartNewsグループ入りしてから実に4年、ようやくスマートニュース株式会社と合併させることができました。これにてPMIは名実ともに完了です。
GeoLogicの位置情報広告プロダクトはSmartNews Adsの「地点半径ターゲティング」として大きく改善を加えながら移植され、今後もさらに機能拡張されていきます。SmartNewsのブランド力と商流を活用することで、位置情報広告をアンテナの高い広告主様だけのものでなく、より広く一般的に使ってもらえるようになるはずです。それが創業当初からの願いでした。
ネット広告業界人から見ると、ジオロジックはBuyerでスマートニュースはPublisherと映るかもしれません。しかしマクロで見れば、どちらも材料を仕入れて付加価値をつけて代理店・広告主様に対して広告を販売するという、根源的には同一のビジネスモデルです。規模としては大きく異なるものの会社として保持している機能はほぼ同じで重複が多かったため、組織統合はM&A以前から企図されており、当然の帰結でした。逆を言えば、子会社として分け隔てられている意味合いはほとんどありませんでした。
創業者の得手不得手
そして、組織の完全統合を見届けるのと同時に、私はSmartNewsグループから離れることにしました。今回のプロダクト統合にあたって、私は何もしていません。いや、率直に言えば、私が関わらないようにした方が統合がうまく進みました。以前、私が先頭に立って統合を進めようとチャレンジしたことが複数回ありましたが、私の調整能力(と英語能力)が絶望的に無く、物事がまったく前に進みませんでした。
今回はジオロジック入社組で調整力を持ち合わせたメンバーたちが統合のフロントに立つことで、驚くほどトントン拍子に話は進みました。被買収側の創業者がPMIのフロントに立つというのは、アンチパターンとして教科書に載っているんじゃなかろうかと思う今日この頃です。
ところで昨今、「ロールアップ」という言葉が流行していますが、そう簡単に行くんだろうかと思ったりもします。同じ渋谷産まれのスタートアップ同士でさえ統合がこれほど困難だったのに、スタートアップと伝統的な企業であればプロトコルの違いによる連携の難しさは想像に難くありません。多くの場合、効率化できることは限定的なはずなので、商流における独占的な交渉力を手に入れたりブランドなどが主目的でなければ、相次ぐM&Aによるロールアップ戦略はなかなかに大変だろうなぁと思っています。念のために補足しておくと、私はM&A件数が増加することに対しては大賛成のスタンスです。
AIだろ、AIっ。
さて、私は次に何をやるのかといいますと、また一人で起業します。今回改めて、サラリーマンとしての無能さを痛感しました。日本市場におけるタイムマシン経営で0-1の単打を狙うという、泥臭くカッコ悪いスタイルが私なのだと、この4年間で再認識するに至りました。
言うまでもなく2025年の今、生成AIの進化によってすべての環境が激変しています。これを言うのも憚られる程ですが、私は2010年前後の第3次AIブームの始まり頃まではAIを専門にしていました。京都に篭ったりしながら人間とほとんど話さずに7年間くらい、データとだけ向き合っていました。スタティックなネット広告の世界に大規模データ分析によるインテリジェンスを持ち込んだのがDSPだったんですね。当時の手法はデータマイニングや機械学習(ML)と呼ばれ、職種はデータサイエンティストと名乗ったりもしました。その後、説明の難しいブラックボックスが多くなるディープラーニングの登場あたりで、私はAIの世界から脱落したのです。
それから時は流れて2022年、ChatGPTをはじめとする生成AIの登場は、まさに革命でした。私がそれまで20年以上かけて培った様々な能力は、突然無価値になって溶けました。森羅万象の情報をあらゆる手法で収集し、リサーチし、軸を定めて本質をあぶり出し、資料に整理し、データを分析するアルゴリズムや処理するプログラムを作るといった私の得意なことは、ぜんぶ生成AIの方が得意だったのです。
事実は映画よりも奇なり
俺の心の映画ベスト10、第一位は今週も『2001年宇宙の旅』だった。これにて26年間連続!ただ、映画に登場するAI「HAL9000」の実現性に関しては、一応は専門家の端くれとして未来永劫実現できないとも思っていました。生成AI以前の旧型AIについて、このポストでは便宜的に「人工知能」と呼んで区別しましょう。人工知能は数値予測や分類などの特定タスクはできるものの、人間のように汎用的な能力を持った人工知能の実現は夢のまた夢だと考えられていました。信じられないくらいポンコツだったのです!現在の世界を見渡せば、Teslaの自動車に搭載されたAI「Grok」がハードウェアの一部制御を始めるのも時間の問題であり、モビリティとAIの組み合わせという点ではHAL9000とほぼ変わりません。
生成AIの進化の結果起こったのは、ホワイトカラーの能力が『エヴァンゲリオン』において人類がLCLに溶けて同質化されていく状態に近いことです。生成AIによって、他人との能力の境界が無くなくなってゆく。『フランケンシュタイン』において博士が生み出してしまった怪物のように、自らの創り出したAIを恐れ、シンギュラリティなどと笑っていられない状態にもなりつつあります。
そんなこんなで、2024年から2025年上半期にかけては、「私の本質的な能力とは何なのか」という思索に耽ることが多くなりました。IT修行僧の集うここ東京で、私はMacの前で即身仏になりかけていました。まだ悟りの境地に至ることはできていませんが、ぼんやりと見えてきた景色はあります。AIを売るのではなく、大量のAIエージェントを従えて、どこまで一人(あるいは少人数)でできるのかというチャレンジです。想像してごらん。Macの向こうに、ロボット兵を動かすムスカのような私の顔が見えるでしょう。「フハハハ。ディープリサーチ君、3分間待ってやる。」
あなたはなぜ単独登頂するのですか?
昨年から「リテールメディアJAPAN」というメディアを副業として立ち上げて運営しています。リテールメディアは想像していたよりもECと広告が複雑に絡みあった世界でした。私は自分で手を動かして手触り感を持ってビジネスをしてみないと勘所を掴めない人間なので、最近は工場に発注して自社ブランドでものづくりを行い、ECでの販売まですべて一人でやったりしています。もちろんAIとともに。自身がメーカー・ブランド・広告主になることで見えてくる景色は、アドテクベンダーからの視点とはまったく違うものがあります。さらに手触り感が欲しくて、タイミーで物流の仕事をさせてもらったりもしました。
なぜひとり、あるいは少人数なのか。関わるメンバーは少ない方が意思伝達する量が少なく、ひとりあたりの仕事は基本的にはスピーディーだからです。ジオロジックは独立経営の頃は人員を極限まで増やさず、売上よりも利益にこだわった経営をしてきました。ネット広告メディアビジネスは広告代理業とは異なりセールスのヘッドカウントと売上が比例しないという理由もありますが、結局のところはそもそも私がそういう志向を持っているということに帰結するのかもしれません。
最近は毎日、エンジニアとコミュニケーションするかのようにAIに指示しながらバイブコーディングしています。今はまだ詰まる部分も多いですが、AIは猛烈な勢いで進化を続けているため、現在の課題はいずれ解消するでしょう。ライトなソフトウェア開発は、ドラえもんが四次元ポケットを操作する技能に近くなっていくのかもしれません。そして気づいたのは、浅く広くのなんでも屋は、AIとは一緒に働きやすいということです。AIによる無能化という絶望の果てに、「これからって俺の時代じゃね?今でしょ!」という境地にまで辿り着いたのです。
季節が変わったら、新しい服を着てでかけよう
さて、起業にはお金がつきものです。スタートアップといえばVCからの資金調達ですが、起業家界隈でもVCについて意外と理解されていないなと思うことがあります。VCというモデルは、日本では大企業や金融機関など、米国では基金などのLP(出資者)の資金がVCファンドに投資され、その資金をVCが多数のスタートアップ株式に投資してポートフォリオを組み、その一部が10年以内に大型上場というホームランを打つことで生み出すファンド全体のリターンをLPにお返しするというのが基本のモデルです。スタートアップは自分たちのビジネスの頑張りという内部要因だけでなく、金利や株価などを含む経済環境等の外部要因というアンコントローラブルな要素にも資金調達環境は大きく左右されます。大口の投資家にとって、投資の選択肢として上場株・債券・不動産・コモディティなどと同列に我々スタートアップの未上場株であるVCファンドが並べられている状態であって、各々の価格の長期的な波によって投資配分は常にリバランスされます。現在は残念ながらグロース銘柄のパフォーマンスや上場見込みが相対的に見て良くない状況が続いています。
振り返るとスタートアップにとって2010年代は、奇跡のVCエコシステムが成立していた一瞬の春だったのではないかという気がしています。VCへの資金流入が鈍っている今、少人数でAIを使い倒して低燃費運営し、エクイティ調達を燃料とするロケット打上げは行わないスタートアップ(世界はそれを中小企業と呼ぶんだぜ)の季節なのではないかと思ったりしています。利益出していこーぜーっ!
生成AIによって世界が根底からリセットされた影響で、戦略を練りに練って狙い玉を待つよりも、今はバットを振る回数を増やす方が得策である時間帯に変わったのかもしれません。ボールかもしれない球でもしばらくは積極的に手を出していきますので、私になにかできそうなことがあれば代打のご指名をください。出塁率にはこだわっていきます。
それではごきげんよう。行ってきます。






たまーに出現する良つぶやきのために時間を消費せねばらならんというのはつらすぎる。。






(別にかかってないしうまくないし)


聖地巡礼。
ってな妄想も吹っ飛ばしてくれるのがまたまたオムニことことオムニチュア(Omniture)。
TSUTAYAのTカードも似た構造で、あるお店の購買者の他のお店での活動情報を提供しつつ、効果的なTカードの販促活動を販売している。

)。切り替えられない場合は去るしか無い。ベンチャーは巨象が一歩を踏み出す前にチョロチョロ進む鼠。脱ベンチャー宣言の後は、赤い海で巨象に正面から闘うためにあらゆる手法を切り替えねばならない。一歩先行きひとひねりする桂馬的ベンチャーと、とにかく先端駆ける香車的ベンチャーがあるが、いずれも敵陣に入れば通常は成金になるべきだ。


![くやしいです[ビジネス]](https://livedoor.blogimg.jp/oillio99/imgs/c/1/c15762c7-s.jpg)



本当のあるべき姿は、コンテンツに対して対価を支払うべきなのにね。

